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…彼女が、僕の呪いについて懸念したのはこのこともあるのかな。
見た目は人と変わらなくとも、数百年を生きる彼女は、友人が自分を置いて置いて死んでいく様を、何度も見てきたのだろうか。
それに気づいてしまって、思わず本棚の整理を再開するAちゃんを見た。
本棚から俺に視線が移る。
「…その、答えたくなかったら答えなくていいんだけど…俺の呪いを心配してくれたのって、君の寿命も関係ある？」
「……そうね。私がここで働き始めたのと同時期にヒーローを始めた奴も、同僚も皆死んだわ。殉職した奴と、途中で辞めていった奴とでさまざまだけど…私とあいつらじゃ、寿命が違いすぎる。私のこれは生まれつきで覆せないものだけれど、あなたのそれは…まだどうにかなるかもしれない。そんなふうに考えたのは否定しないわ。余計なお世話だろうけどね」
「…そっか」
淡々とそう告げる彼女の声に含まれる悲哀と懐古に気づけるくらいには、彼女が本当は優しい人だと知っている。
その同期達のこともあるのだろう。ヒーロー達を死なせたくないと躍起になるのは。
納得するのと同じくらい、彼女の中でどれほど「死」が恐ろしいものなのだろうかと思ってしまう。
医者という仕事をしていて、人よりも長い寿命を持つ彼女が見てきた「死」は、俺が思っているよりも多いのかもしれない。
…すごく単純な理由で彼女を意識して、気になり始めた俺だけど、それでも彼女のことを理解したいと思うのは確かに本当だと思うから。
「あの…草凪ちゃん。もしよかったら東のヒーローを担当する前、Dyticaとかと仕事してた時期の話、聞かせてくれない？」
「いいけど…どうしたの？くだらないものしかないわよ。役に立つようなものは何も…」
「僕達と出会う前の君の話、君から聞いてみたいと思って」
「…そう。それなら、あの3人も呼んでお茶にしましょう。もう本の整理も終わったし」
「うん」
そっけなくて、でも本当は誰よりもヒーローの無事を喜んで、安堵してくれる人。
よく考えてみたら、君のことを僕は全然知らなくて。君が気になる理由の追求は、君をよく知ってからでも遅くないはずだから。
君の話をたくさん聞かせてほしい。君のことをひとつ知って…対等でありたい、君の哀しそうな顔の訳をちゃんと知りたいと思った。
ヒーロー達を戦いに送り出して、傷つく姿を見るのは辛いはずで。それでも、これまで歩み続けてきた人の理解者になりたいと、そう願ってしまったのだ。
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作者名：613 | 作成日時：2024年2月7日 7時
