Prologue ページ1
「……バカじゃないの？これだからヒーローは嫌い」
「…すみません」
ヒーロー嫌いを公言するヒーラーは目の前のヒーローを睨みつけ、包帯を巻きながらそう言った。
佐伯イッテツというヒーローは、とりわけ彼女…Aからのあたりがキツかった。
なぜか？それは毎度任務のたびに大量の怪我をしてくるからだ。傷一つ一つは浅く小さいものの、誰が見ても「ボロボロ」と表現したくなるような姿に、彼女は歯噛みした。
それを自分への苛立ちと捉えたのか、佐伯イッテツは目を逸らした。それ故、佐伯は気づくことがなかった。Aは涙目であることを。
そんな2人のすれ違いは、2人の周囲にとっては日常茶飯事である。
そしてまた…
「絶対、ヒーラーちゃん俺のこと嫌いだよね！？そうだよね！？」
「おー、絶対違うから安心しとけ」
「この後ご飯行く？」
「ええなぁ、そうしよそうしよ」
「適当すぎない！？」
「いやだって、Aちゃんがテツ嫌いなわけないもん〜」
「せやな」
「うそー、ヒーローはこれだから嫌いだって言われたよ？？」
「あー…早く気づけ？」
「何が！？」
佐伯イッテツが嫌われているのではないかと嘆くことも、
「あいつら元気にしてるかと用事ついでに来てみたはいいけど…あ、A泣いてね？」
「えっ、マジじゃん。泣いてる…」
「“また”ですか？」
「…佐伯くんに嫌われた、今度こそ嫌われた…無理」
「はいはい、テツに嫌われたくないなら素直に心配だって言わんとなー」
「言えたら苦労してないわよぉ…というか、何でいるんだあんたら」
「主にお前の顔を見に」
「泣くほどイッテツのこと好きなんだから、言ったほうが楽なんだけどねぇ…難しいのが現状だよね」
「うぅ」
「よーしよし、大丈夫ですよー」
「ほんと相変わらずやな、お前ら」
Aが自己嫌悪してこっそり一人泣いているのも、“7人”にとっては見慣れた光景だ。
実際にはAというヒーラーがいつも傷だらけの佐伯イッテツを心配するあまり、そっけなくしているだけなのだが。
口ではヒーローを嫌うが実際はヒーローが傷つくことを憂う心配性で世話焼きなヒーラーと、そんなヒーラーに好かれているとは微塵も気づいていない絶対的ヒーロー。
これは、そんな二人と東西ヒーローの物語。
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作者名：613 | 作成日時：2024年2月7日 7時
