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*第54話 ページ5

そらるside


あれは、歌い手活動を始めて少し名が知れてきたころのことだった。



俺には彼女がいた。


歌い手の活動もやっと軌道に乗ってきたし、高校生以来久しぶりに好きだと思える人もできて、最高潮に幸せな生活を送っていた。



彼女「そらる−すき!」


「ん。俺も。」



その彼女は愛情表現をまっすぐにぶつけてくれる人だった。

だからこそ、それが嘘だなんて疑わなかった。



しかし、付き合って半年ほどたった時事件は起きた。


俺の家に彼女が泊りに来ていて、俺は部屋で作業しているからと彼女を一人リビングに残し、作業に向かった。



その時は予定より早く作業が終わったので、彼女のいるリビングへと向かうと、彼女が誰かと話している声が聞こえた。



彼女「そー!ほんとに、あのそらると付き合えてるとか夢みたい!一度は有名人と付き合ってみたかったんだよね〜!しかも、動画投稿とかいろいろしてるみたいでめちゃめちゃお金稼いでてだいたいいつも高級なところ連れてってくれるしww服とか買ってって言ったら何でも買ってくれるしさいこうすぎるww」



「いいな〜wわたしまふくん推しだから会えたりしないかな⁉なんか理由付けて合わせてよ〜」




彼女「いいよwたぶん私のこと好きすぎてなんでもいうこと聞いてくれると思うしマジ神ww」




ガタっ




思わず持っていたスマホを床に落としてしまった。



彼女「やばっ。後でかけなおす!


そ、そらるお疲れ!もう終わったの?」



さっきとは打って変わって、いつものようなかわいい声で話しかけてくる。




そっか。あれは作り声だったのか。


俺に見せてた顔も声も仕草も全部。有名になった“そらる”と付き合うために。



本当の俺を見てくれてたわけじゃなかったんだ。

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作者名:sena | 作成日時:2022年1月19日 23時

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