はち ページ9
「へーーー、ふーーーん」
「…おい」
咎めるように声をかけると、彼はすっと身を引いた。からかうような声色に反して、拗ねた表情。どうもまだ子供っぽい感じのする後輩に、村山は出かかったため息を止めた。
「轟ちゃん。何が気に入らねーのかな」
轟洋介は、別に拗ねてませんけど、という雰囲気で眼鏡を押し上げる。まさか構っていなかったから怒ったのだろうか。いや、今までもこちらから構った覚えはあまりないけど。
「村山に彼女ができたっていうから」
「村山さん、な。あと彼女じゃない」
「喧嘩しなくなんのかなって」
「はあ!?!?」
外見や喧嘩の時からは想像できないくらい常識はあると評判の村山良樹は思わず素っ頓狂な声を上げる。きっちり揃えられた髪に眼鏡に規定の制服、真面目な格好で頭の中が筋肉でできているのはこいつもだった。こいつは楽しんでいるぶんなおたちが悪いのだった。
後ろでAがおそるおそる轟の様子を伺っているのを感じて、村山は今度こそため息をついた。
「初対面は自己紹介だろ。あ、拳じゃねーぞ」
かくして外見と中身の伴わないふたりが向き合った。
「…轟洋介。全日。趣味は不良狩り。いつか村山を越える」
「AA、です。趣味は猫の横顔を眺めること。いつか村山さんに恋します」
「うん、おかしーよなーふたりとも」
轟もAも「えーこの人変わってるー」みたいな顔をしているが、どっちもおかしいんだぞ。かく言う村山もいろんな場所であの鬼邪高校をまとめるとか怪物じゃないのか、俺はアメリカンドッグの妖精だって聞いた等々言われているのだが、本人は預かり知らない。
「…いつか恋するってなに?新興宗教?」
「いや、違うんです。付き合いたいんですけど順序が違うって言われて」
「???」
そうだよな轟。そうなるよな轟。うんうん、と頷く村山良樹をちらりと見やって、Aが聞き返す。
「それで趣味が不良狩りとは」
「ん?いや、俺が不良嫌いだから、不良を狩ろうと」
「暴力で?」
「暴力で」
「???」
そうだよなA。そうなるよなA。外見ばかり優等生なふたりは歩み寄ることかなわず、お互いを宇宙人でも見るような顔つきで見ている。
とりあえず礼儀正しさがそうさせるのか握手は交わし、同時に村山を振り返って腕でばってん、頭をふるふる。理解できませんのポーズなのか?村山はぎゅうと顔をしかめ、ため息とともに言う。
「おれもお前らが理解できねーよ…」
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臣嫁(プロフ) - 私、轟くん苦手だったんですけど、この話の轟くんは可愛くて愛着湧いちゃいました(笑)更新待ってます!頑張ってください!! (2017年3月27日 12時) (レス) id: 784c0dafd1 (このIDを非表示/違反報告)
遠野助(プロフ) - ユイさん» コメントありがとうございます!雰囲気寄せられるよう考えているので、そう言っていただけるとありがたいです!! (2016年9月6日 23時) (レス) id: 4c0cbcf27c (このIDを非表示/違反報告)
遠野助(プロフ) - なおいちさん» これと、空は青〜の方にもコメントを下さり、ありがとうございます!お話、気に入ってくださってとても嬉しいです!更新遅くて申し訳ないですが、これからも頑張ります! (2016年9月6日 23時) (レス) id: 4c0cbcf27c (このIDを非表示/違反報告)
ユイ(プロフ) - 可愛いー!なんか二人とも可愛いですね!村山さんの雰囲気の出し方がすごくうまくて、ついついにやついちゃいました☆笑 (2016年8月17日 2時) (レス) id: c991eb38ad (このIDを非表示/違反報告)
なおいち(プロフ) - 小説凄い面白くてお気に入りです。話の展開とか書き方が自分的に好きです笑更新頑張ってください!!!楽しみにしてます (2016年8月15日 12時) (レス) id: 65c1787242 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遠野助 | 作成日時:2016年8月9日 3時