ぜろ ページ1
ここは鬼邪高校。
不良が跋扈し、風紀のかけらも見当たらない学校である。
落書きのない場所はないコンクリート塀の前に、ひとりの少女が立っている。
紺のセーラー服は、お行儀よく膝丈で、すらりと白い脚が伸びている。少し色素の薄い髪は肩甲骨あたりでふわふわと風になびいていて、赤茶の猫目はまっすぐに前を見ている。あかくて小さな唇を真一文字に結んで、彼女はその、およそ似つかわしくない場所へ一歩、踏み出した。
「村山さん！！」
ばん、と大きな音とともに扉が開いて、村山良樹は鬱陶しげにそちらを見た。
「なに、うるさ…」
言いかけて口を閉じる。関が連れている生徒(といっても、ど金髪の大層なヤンキーである)は、右目を大きく腫らしているのである。どう見ても喧嘩後。
そりゃあ、こんな不良校なので、喧嘩は珍しくない。暴力沙汰は日常茶飯事だ。だが、だからこそ、そんな生徒を関が連れてくるのはおかしい。
「…何があった」
「お、女が…」
「は？」
「女が乗り込んできて…なんかよくわかんないこと言ってたんで、こいつが殴りかかったら、返り討ちにあって…」
村山はしばらく黙った。バンダナと長い前髪の下で、存外理知的な色をたたえている瞳がくるりと動く。
先に手を出されたわけでもないのに女を殴るのは良くないな、それは言い聞かせておこう。それで、その女っていうのはどこのヤンキーなんだ。
訊くと、関は逡巡した。答えるのを迷っているようだった。どうにもおかしい。足を軽くトンとついて促すと、ようやく口を開く。
「せ、セーラー服の…」
「…はあ？」
今度こそ村山が眉毛を釣り上げた時、ドンと扉が蹴飛ばされた。当然前に立っていた関と誰かは吹っ飛ばされる。開いた扉の向こうに立っていたのは、この教室にまったく不似合いな少女。
「てめっ…」
「うるさい」
ちっとも非行と結びつかないその姿にぽかんとしていた村山だが、少女が飛びかかった関に勢いよく裏拳をぶち込んだ音で我にかえる。なかなかすごい音がした。
本当にあの無骨な男ふたりを倒したのか。この子が。
これは戦闘態勢に入るべきなのか、いやそもそもなんでここに来たんだと村山が考え始めたとき、答えは彼女自身が言った。村山と目をがっちり合わせながら。
「喧嘩じゃなくて、恋がしたい！！」
板が剥げてところどころコンクリートが見えている教室に、泡を吹いて倒れている男ふたり。かわいい女の子に告白されるにはあんまりなシチュエーションだった。
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臣嫁(プロフ) - 私、轟くん苦手だったんですけど、この話の轟くんは可愛くて愛着湧いちゃいました（笑）更新待ってます！頑張ってください！！ (2017年3月27日 12時) (
レス) id: 784c0dafd1 (このIDを非表示/違反報告)
遠野助(プロフ) - ユイさん» コメントありがとうございます！雰囲気寄せられるよう考えているので、そう言っていただけるとありがたいです！！ (2016年9月6日 23時) (レス) id: 4c0cbcf27c (このIDを非表示/違反報告)
遠野助(プロフ) - なおいちさん» これと、空は青〜の方にもコメントを下さり、ありがとうございます！お話、気に入ってくださってとても嬉しいです！更新遅くて申し訳ないですが、これからも頑張ります！ (2016年9月6日 23時) (レス) id: 4c0cbcf27c (このIDを非表示/違反報告)
ユイ(プロフ) - 可愛いー！なんか二人とも可愛いですね！村山さんの雰囲気の出し方がすごくうまくて、ついついにやついちゃいました☆笑 (2016年8月17日 2時) (レス) id: c991eb38ad (このIDを非表示/違反報告)
なおいち(プロフ) - 小説凄い面白くてお気に入りです。話の展開とか書き方が自分的に好きです笑更新頑張ってください!!!楽しみにしてます (2016年8月15日 12時) (レス) id: 65c1787242 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遠野助 | 作成日時：2016年8月9日 3時
