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「全部背負えよ。僕の全てを受け入れてよ、優しい君ならそうしてくれるんだろ? ここまできたら『いいえ』の選択肢は無し、最後のセーブポイントはもう通過済みってことで。いいよね? 君がそう言ったんだよ?」
ひっ、と監督生が上擦り声を上げたのは左手首の薄い皮膚をイデアの指の腹がするりと撫ぜたからだった。そのまま血管をなぞるように、すりすりと白く骨張った指が滑る。腕を通して脊髄に触れられるような感覚に唇を噛む監督生を、イデアはうっそりと目を細めて見つめていた。肩を掴んでいた左手は首筋へ。指先で触れられ反射的に身を縮めようとする監督生だが、その顎はすぐさま捕らえられ上を向かせられる。その視線の先でイデアは頬が裂けるほど口角を吊り上げ、尖った歯を見せ付けるように剥き出して笑っていた。ーーそれは勝利を確信したような捕食者の顔だった。
「いやあ、本当についてませんなあ監督生氏は。こんな陰気なところに来ちゃった上に僕みたいなのに目つけられるなんて、運命の女神に見放されてるどころか最早最初からアウトオブ眼中って感じ? 哀れすぎて同情しますわ」
言いながらイデアは監督生の両腕を掴み、彼女の頭の腕でひとまとめに押さえつけた。監督生はびくりと怯み、力の篭らない腕で拘束を振り解こうとするが何の意味もない。その様子をイデアは鼻で笑い、彼女の小さな耳に顔を寄せて低く囁いた。
「ねえ君、これから何されると思う? ……ヒヒッ、残念。もうまともな人生歩めないね。僕と一緒に将来バッドエンド確定だ」
もう言葉すら失い、ぽろりと涙を流した監督生の頬をイデアは開いた左手で拭うと、彼女を逃さぬように頭を抱いて、震える唇に口付けた。
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しい(プロフ) - あやふやさん» コメントありがとうございます。頑張ります! (2020年10月12日 18時) (レス) id: 6987cf2560 (このIDを非表示/違反報告)
あやふや(プロフ) - 好みの作品です!更新頑張ってください!! (2020年10月12日 16時) (レス) id: 303d8e2bcc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しい | 作成日時:2020年10月5日 0時