【twst】暫定。模索。短編集 ※不穏注意 (ページ6)

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そんなつもりじゃなかったのに手篭めにされちゃう感じのイデ監（微裏）ページ6

監督生にとって、人に好意を伝えるのは普通のことだった。エースにからかわれたりアズールにカモ呼ばわりされても素直なお人好しを貫いた。特に下心があったわけではない。気持ちは冗談で流すより、ストレートに伝える方が好きだったから。それだけ監督生が人懐っこい性格ということでもあった。
　心を開き、素直な気持ちで話せば誰とでも仲良くなれる気がした。だからその相手がイデア・シュラウドであろうと監督生のやることは一つで、打算も偏見も無しにただ相手に歩み寄ろうとしたーー彼とすれ違う度に会釈をしたり、オルトやグリムを通して喋ったり。最初こそ猫を見た鼠のごとく逃げられたものだが、そのうち気を許してくれたのか、合同授業で隣に座っても彼は何も言わなくなった。兄さんに友達ができそうで嬉しいな、と笑うオルトに「そうなるように頑張るね」と返しつつ、仲良くなれたら勉強でも教えてもらおう、とか。監督生はずっと、そんな呑気なことを考えていた。

　だから、監督生にはこの状況が理解できなかった。

「君さあ、僕なんかに構って何が楽しいの？」

　イグニハイド寮、イデアの自室。本人とその「弟」以外が踏み込むはずもない場所に監督生は連れ込まれていた。左手首を掴まれていた。監督生の左手首はイデアの右手によって、右肩は左手によってがっしりと拘束され、そこにかかる負荷が筋肉とは無縁な彼もまた男であることを雄弁に示していた。覆い被さるようにして立つイデアの表情は、苛立っているような、あるいは悲しんでいるような。逆光になる顔は炎でできた彼の髪だけがぼんやりと照らして、その心根を監督生が探り当てることはできない。ただ自分が何かをしでかして、先輩に責められていることは分かっていたから、焦燥する脳を必死に宥めて無難な答えを返そうとした。

「わ、私は先輩ともっと仲良くなりたいだけです、よ」

　その言葉にイデアは手に込めた力を強めたものだから監督生はさらに焦った。必死に、彼がどんな答えを求めているのか考えようとして、混乱しながらさらに舌を回そうとする。

「あの、迷惑ならやめますので、っ」

「頭花畑なのか底抜けの馬鹿なのか知らないけど。それとも異世界転生の代償にオツムを持っていかれたとか？ともかく監督生氏の脳天気レベルがカンストしてることだけはわかりましたわ」