【twst】暫定。模索。短編集 ※不穏注意 (ページ3)

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「オ……ルト、なに、今の……」
「もうっ、監督生さんったら」

　ふにっ、オルトの冷たい指が監督生の頬をかるく突く。飛行装置の出力を弱めて床に座り込み、目線を合わせるような仕草は悪い子を叱るエレメンタリースクールの先生のようだった。

「出入り口に近づいた生体を識別して、対象に電気ショックを与える仕組みになってるんだ。危ないから、勝手に出ようとしたらメッ、だよ」

　わかった？と優しく付け足してオルトはにっこりと笑う。素直な表情と裏腹に吐き出される言葉は物騒そのものだった。要は監督生が部屋から出ようとしたら電気ショックを浴びせられるということ。先ほどの衝撃を鑑みるに、確かに命に別状はない、しかしヒト一人を無力化するほどの威力。スタンガンの電流をお見舞いされたようなものだ。監督生には何一つ理解できなかった。何が目的？なぜそうまでして自分をここに繋ぎ止めようとする？ ……私の人権は？分からないが脳内ではなおさら警鐘が鳴っていた。ここから逃げないとまずいことになる。それこそ取り返しがつかないようなことに。魔法も使えない、なんの抵抗手段も持たない人間を密室に閉じ込めて、あまつさえ電流で痛めつけるような兄弟。どこぞの悪徳人魚三人組よりよっぽど倫理観を捨てている。逃げなきゃ、早く逃げなきゃ。未だ痺れが残る体を引きずってドアを目指す。先ほどの衝撃と痛みを思い出して体が勝手に震える、けれど今逃げなきゃもっと酷い目に遭わされる予感、一刻も早く自分の味方のいる場所に行きたいという懇願に必死で力を込める。

「監督生さん。もしかして、ここから逃げようとしてるの？」

　電気ショックはまだ来ない。早く、早く、外へ。

「確かに外で遊ぶのも楽しいけど……兄さんとの約束だからなあ」

　ドアは閉まったまま動かない。それでもただ運命に甘んじるよりマシだ。硬い床に食い込ませる指が痛む。それでも、前へ。

「どの道ムダだよ。だって君はもう、僕の中にいるんだもん」
「……え？」