［鬼滅］上弦の月花＿怪鬼始動偏[男主］

花月32「御伽噺」 ページ32

過去編?みたいな。



ねぇ、母さん。

父さんはどうして死んだの?どうして僕には父さんが居ないの?

少年はその言葉を口に出さない。

"出せない"

いつも心で思うばかり、

父のことを考える、

顔も分からない父親のことを。

少年のなかの父親像は、所詮像。

本当のことでは無いのだと幼きながらに理解していた。

少年の母親はいつもいつも泣いている人だった。

自身の息子を抱き締めて泣くのだ。

病弱で貧弱で愚かな母をあやすかのように少年は母親の背をたたく。

母親は少年にすがっていきる人だった。

自分の息子が生きているから生きる。

そんな人。

母はいつも言うのだ。

＿ちゃんと育ててやれなくてごめんなさい。

＿ちゃんとした人と結婚出来なくてごめんなさい。

＿ちゃんとした子に生んでやれなくてごめんなさい。

＿ちゃんとした母親じゃなくってごめんなさい。

＿ちゃんと愛せなくてごめんなさい。

＿ちゃんと生きれなくてごめんなさい。

うるさい。

母親がしゃべるたび少年の頭の中はその一言で埋め尽くされる。

お前が謝ってなんになる。

お前が後悔してなんになる。

お前が反省してなんになる。

この親子の歯車はいつから正常に回らなくなったのだろうか。

黙れ。

少年は殺意を抱き。

母親は哀情を抱き。






・









・






始祖の鬼は愛情を抱く。





……ほら、今も笑ってる。
黒髪に赤目。口から鋭い凶器を覗かせて。

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