夢物語 (ページ8)

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存在しない記憶Ⅱ ページ8

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「ねえ兄さん、ナナミンが来ているのは良しとして、その小脇に抱えてるの何？」

「ビール(箱)(常温)です」

門の前でばったりと兄貴たちと鉢合わせたのは良いが、一番最初に目についたのが箱だった。

何時になく上機嫌な兄貴に、何やらすこし面倒臭そうな表情を浮かべて近くのスーパーの袋を持っているナナミン。

「……すみません悠仁君、止めたんですが」

「いや、まぁ、ソレが普通っていうか、兄さんの普通っていうか…」

後ろにいた伏黒も釘崎も伊地知さんも驚いて固まっている。

「ナナミン、一応確認するけど道中お酒飲んでました？」

「……ビール5本ほど」

数時間ほど前、任務先でお祭りがあって屋台のモノが食べたいか否かの連絡が入っていたのは記憶に新しく、自分と伏黒、釘崎、伊地知さんの晩御飯分を買うとも言っていた。

ぎゅるるる、と俺の腹の虫の音が鳴ると兄貴は分かりやすく笑う。

「ご飯にしましょう、先に温めておきますから着替えてきてください」

ルンルンな兄貴に、誰もが背中を見送る。

「……A先生、酔ってる？」

「いや、ビール5本で酔うような人ではないけど……」

一回飲み始めるとワイン一本開けるような人だし、といえば釘崎から嘘だろ、と呟くのが聞こえた。

　

　
シャワーを浴び着替えて、共同用スペースに行けばソースの香りが充満していた。

「お、うまそーな匂い！」

別に普段から食べようと思えば食べれるものだが、屋台のモノは特別感があっておいしく感じる。

「あ、ナナミンも食べていくの？」

「えぇ、折角ですので」

お皿に盛りつけられたのはお好み焼き、恐らく屋台で買ったものを温め直したのだろう。

既にテーブルには温め直されたものが並んでいた。

ほどなくして伏黒と釘崎、伊地知さんが来て少し遅めの晩御飯にありついた。

「んーおいし！市販のものもいいけど屋台のモノも悪くないわね！」

「久々に屋台ものですが、いいですねこういうのも」

「あ、伏黒タコ焼き一個ちょうだい、イカ飯やるから」

「ん」

「伏黒私もちょーだい、オムそばあげるー」

「……伊地知さんもどうですかタコ焼き」

「え、いいのですか？」

「かわりにお好み焼き下さい」

「はい、どうぞ」

それぞれ一口ずつ貰って食べていれば、ふふふ、と兄貴が笑うのが聞こえた。

ソファの前のテーブルに積まれたビール缶に思わず目を見開く。

「まって兄さんそれ何本目？」

「7本目です」

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