緩み ページ12
．
「兄さん、ご飯できたよー…ってアレ」
汗と土でドロドロになって帰ってくる日が増え、シャワーを浴びた兄貴が先ほどまでソファに座っていたのは見たのに、その姿が見えなくなって一瞬焦る。
が、ソファの背もたれの向こうを覗けばいつの間にか横になって静かに寝ていた。
座って寝ることは良く見るが、横になって寝るのは相当疲れていたのだろうか。
ぐるり、と移動をして床に座り兄貴の顔を覗き込んだ。
「にーさん」
「……」
「ごはん」
「……」
普段と変わらない声量でいうが全く反応を示さず、すうすうと寝息を立てている。
このまま寝かせておきたいが、折角作ったご飯が冷めてしまうのは勿体ない。
うーん、と悩みながらも頬を指でつつく。
「意外と固いな」
あまり兄貴の顔をしっかりと見た事は無かったため、じっくりと眺める。
つつくのをやめてそっと頬を撫でると、ピクリと瞼が動き起きると思ったが瞼が開くことは無く、寧ろ掌に擦り寄る動作にどきりとする。
どきどき、としながらも好奇心が湧き始め薄い唇にそっと親指を当てる。
「うわ、ぷにぷに」
反対の手で自分の唇に触れ、ガサガサに荒れてはいないが水分を失っている自分の唇に、リップでも塗っておこうかな、と考える。
つい唇に目線が釘付けになる。
触れたい気持ちと、やってはダメという気持ちがぐるぐると巡る。
「(寝てるから別に、いやその前に起きてしまったら、)」
でも、でも、でも
触れてしまいたいぐらいには好きで、少しでも兄貴の体温を感じたい。
「っ」
ええいっままよ！なんて勢いで状態を起こして顔を近付ける。
兄貴の唇に、自身の唇を重ねる。
少し離せば、罪悪感に混じる幸福感に酔いしれそうだった。
兄貴は目覚める気配が無く、背徳感に心臓が五月蝿い。
ふっくらとした感覚が気持ちよくて、もう一度重ねる。
一回目より長く、ちぅ、と下手なリップ音を鳴らす。
目を開けながらしているせいか、異常に心臓がバクバクと五月蝿い。
短いキスを、何度も繰り返した。
「(やべぇ、癖になりそうッ)」
「ぅん」
「っ！！！」
もぞり、と動き思わず勢い良く離れた。
後ろにあったテーブルに背中をぶつけて、思わずいってぇ！と叫びそうになるが我慢をする。
机に置きっぱなしだったDVDのケースが崩れる音がし、その音に兄貴はゆっくりと瞼を開いた。
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琴葵(プロフ) - 面白すぎて一気にシリーズを見てしまいました！！！更新楽しみに待ってます！！！！！！！！ (2021年5月21日 9時) (
レス) id: b0ea0349a7 (このIDを非表示/違反報告)
椎名魏(プロフ) - たきさん» たきさん、コメありがとうございます！好きと言ってくださってありがとうございます…頑張って更新していきますので、楽しみにして頂けたら幸いです。 (2021年4月27日 22時) (レス) id: 7e43feffbc (このIDを非表示/違反報告)
たき(プロフ) - 好きです！(唐突) Fateも呪術廻戦も好きなので、この作品はドンピシャです！作ってくれたことに感謝しかありません！お忙しい中大変とは思いますが、ほどほどに更新頑張ってください！応援しています！！ (2021年3月15日 23時) (レス) id: 8363423ed4 (このIDを非表示/違反報告)
椎名魏(プロフ) - ミリさん» コメありがとうございます。ンンン意図を読み取ってくれて嬉しいです！存在しない記憶は存在しないからこそ存在しない記憶なんですよ！！もう、意図を読み取ってくれた事が嬉しすぎて...ありがとうございます...頑張ってお話進めます...好きと言ってくれて感謝感激です (2021年2月14日 10時) (レス) id: 9ede5cc8ab (このIDを非表示/違反報告)
ミリ(プロフ) - 存在しない記憶…今そういうことかと気づきました…！今日お話がまるっと消えて別のお話が新しく更新されてるのがもう…好きです…これからも応援しています。 (2021年2月14日 0時) (レス) id: e2a1d964c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：椎名魏 | 作成日時：2021年1月22日 18時
