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ただいま戻りました、と人が少ない事務所にそういうと、お帰り、と声をかける声と心配している声が上がった。
電話の通りに私が軍の駐車場に着いた時には上官でもあるエーカー中尉が既に待っていた。
恐らく話は聞いていただろうけども、一通りの事を聞かれ全て答えた。
買い出しでコーヒーを買いに行けなかったことに気が付くが、まぁ別に急ぎではないからいいだろう、と話した。
「いっ、」
買いだした品をしまっている途中、腕を上げようとしたが肩が思った以上に上がらず痛みが走った。
幸い物はしっかりと握っていたため落とすことはなかった。
「(これは暫く動かさない方がいいな)」
いくら検査で異常がなかったといえど、無理に動かせば悪化することがある。
しかしよりによって右腕か。
「嫌な感じ」
「どこか痛むのか曹長」
ひょっこりと覗き込んできたのはグラハムだった。
再び腕に痛みが走り眉間に皺を寄せかけたが、大丈夫です、と答えた。
が、グラハム・エーカーは微かな表情を見逃さなかった。
「君はもう少し適度に周りの人に頼る癖を付けなさい。右腕が痛むのだろう」
謝ろうとしたが謝るようなことではないぞ、と先に言葉を被してきた。
しかしこの上官、かすかな仕草で見抜いたぞ。
ある意味恐怖を覚える。
「確か三日間ほど運動禁止と言われていたか。臨時ではあるが三連休を取ると良い、どうせこちらに来てもやれることは少ないであろう」
「良いのですが?書類の方は」
「大事ない、多少増えようが支障はないとも。ハティ曹長、いくら軽傷と言えど悪化させては元も子もない」
しっかり休みたまえ、と安心させるように笑顔を向けてそう言った。
「グラハムの言う通りだ。それに君がフラッグに乗れなくなったらグラハムが寂しいだろう?」
「カタギリ」
カタギリの言葉にグラハムはむす、と睨んだがカタギリは笑いながらごめんごめんっと軽く謝った。
確かに、と思ってしまうのは上官が組み立てるプランにあったりする。
万が一に備えて動くため、フラッグの操縦になれることは重要でグラハムはかなり実戦に近い動きを取っている。
他の上官は基礎中の基礎を叩きこんでくるが、グラハムは違った。
恐らくフラッグ乗りの中では常識破りな人だ。
そしてそれを難なくついていくのが難しい、多分それは上も知っている事なのだろう。
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作者名:椎名魏 | 作成日時:2019年12月4日 21時