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フラッグのカスタムから一週間、グラハムの端末から電子音が響く。
端末の画面に表示される文字を見て、グラハムはもしや、と期待を膨らませ呼び出しに応じた。
「私だ」
その声は既に待ちきれないという感情が乗っていた。
通話相手もそれに気が付いたようで、少々呆れ気味な声が微かに聞こえた。
「あぁ、すぐにそちらに向かおう...ハティ曹長、フラッグのカスタムが終了したと連絡が入った。格納庫へ行くぞ」
待っていた、待ちわびたぞこの日を。
そんな感情すら読み取れる。
ただ私は了解しました、と短く返事をする、それだけで十分、十分なのだ。
広げていた資料を十分に纏めれずにその背中を追いかけた。
___これはまるでプレゼントを前にした子供だ
上官に対し失礼だと思ってしまうが、その感情が目と、顔と、行動に現れていた。
少なからず他の隊員らには何も思われないかもしれないが、グラハム・エーカーという男がどういった人物か、と分かっていると何となくだが分かってしまう。
一週間、作業者が絶えず出入りし動いていた人が多かった格納庫は、今日はとても静かで靴音さえ反響する。
待っていたよ、とエイフマン教授とカタギリが胸を張って待っていた。
二機の黒いフラッグがそこに、鎮座していた。
「バックパックと各部関節の強化、機体表面の対ビームコーティング、武装はアイリス社が試作した新型のライフルを取り寄せた」
目の前のフラッグを見上げれば、エイフマン教授はそう説明をする。
「壮観です、プロフェッサー」
「その代わり、耐Gシステムを稼働させても全速旋回時には12Gもかかるけどね」
「望むところだと言わせてもらおう」
何故そこで対抗心を生むのか、と思ってしまうが口には出さない。
「ハティ曹長、君の機体もグラハムと同様のカスタムだ。無茶はしないように」
「そこはエーカー中尉の行動次第、とお答えします」
それは実質無茶はする、という答えで何となく察したカタギリは苦笑を浮かべ、またグラハムは善処しよう、と答えた。
「おお!これが中尉のフラッグですか」
聞き覚えのある声と二人分の足音に、視線をそちらに向ける。
二人の男性が敬礼し、こちらも敬礼する。
「ハワード・メイスン准尉、ダリル・ダッジ曹長、グラハム・エーカー中尉の要請により、対ガンダム調査隊に着任しました」
「来たな...歓迎しようフラッグファイター」
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作者名:椎名魏 | 作成日時:2019年12月4日 21時