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「ハティ、聞こえるか？少年は無事だ、腕の力を抜いてくれ。」
グレイ、苦しい。
「大丈夫だ、落ち着くんだ。直に呼吸できる。大丈夫だ、大丈夫」
息が＿＿＿＿＿
「＿＿＿＿＿ごひゅっ、」
途端に呼吸が出来て、求めた酸素が肺にいっぱい入り、咳き込む。
あまりにも苦しく、胸元を強く握った。
次第に救急車のサイレンや警察のサイレンが鳴り響き始めた。
漸く落ち着けた時には応急手当をしながら警察に事情聴取をされていた。
「結構な勢いでぶつかってきたのに軽傷ってどういう事だよ」
どうやら車の方は時速50〜60�卍�出していたようで、私自身の怪我は肩と手の甲に擦り傷が出来た程度だった。
「お前さんが庇った少年は無傷だ。まぁ念の為一緒に病院に行って異常がないか確かめるが」
「いろいろ助かったよ、グレイ」
ジーンズにパーカーとかなりラフな格好をしたグレイは全くだ、と呟いた。
彼は私の同期で、今はユニオン軍の軍医として働いており少々世話にもなっている人物だ。
今日はグレイは珍しくも休日でいろいろ自分の物を買いに行ってたらしいが、事故現場に遭遇したと思えば巻き込まれたのが私でかなり驚いたようだ。
「っていうか、今日飛ぶ予定のはずだろう？」
なんで外にいるんだと、疑問を投げかけられ事情を軽く説明するとなるほどねぇ、とため息とともに零した。
本当に今日はついてない日だよ、と苦笑したがついてないどころのレベルじゃない、と言われた。
ふと視線に気が付き、そちらの方に向いた。
庇った少年が此方を見ており、目があった瞬間に視線を下に向けてそらされた。
「どうも彼は今ご両親とは離れて暮らしているそうだ。連絡は取れたがこちらにはこれないそうだ。病院で検査を受けた後、こちらで送るってさ」
そう、と答えてベンチから立ち上がる。
無茶はするな、と声が飛んできたがひらひらと手を振っておいた。
全く、アイツの体はどうなってるんだ。
そんな風な言葉が聞こえた気がした。
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作者名：椎名魏 | 作成日時：2019年12月4日 21時
