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「(ソレスタルビーイングに動きは無し、と)」


諜報部からの情報は特に入らず一夜が明ける。


ただ部屋では次は何処に現れるか否か、と声が時々上がる。


今はどちらかというとフラッグの強化に誰もが慌ただしく動いている。


「おや、曹長はフライトではないのかい?」


カタギリは淹れたてのコーヒーを片手に、端末を確認していた私に声をかけてきた。


「今日は午後からフライトです。午前中はこちらのお手伝いです」


新設された部隊と言えど人は圧倒的に少ない、特にパイロットは。


それに専用の部屋まで用意されており、そちらのあれやこれやと細かい事をしなければならない。


散らかった資料をまとめ、クリップで止める。


あぁそれはありがたい、と少し疲れた顔でそう言った。


「少しの間仮眠を取られたらどうでしょうか」


「いや、そうともいかないさ。なんせ二機分やらないといけないからね」


「二機?エーカー中尉の機体だけではないのですか?」


チューンする機体は一機だと聞かされていた、それが何とかやれる仕事量だと。


「グラハムがね、何とか二機やれないかと言ってきてね。もう一機はハティ曹長に、って」


まとめる資料の手を止めて思わずカタギリの方を向いた。


私にですか、と疑問と驚きを隠せずにそう呟く。


「それは、恐れ多い事です。私はパイロットとしてまだ未熟者です、私ではなくとも先に適任のパイロットに任せるべきでは」


「僕も同じようなことを言ったよ。そしたらグラハムなんて言ったと思う?」


悪戯っぽく笑みを浮かばせてるカタギリに、私は言いたそうな言葉を思い浮かべる。


「...無茶してもなんだかんだで付いてくる、みたいなことは言いそうですけど」


あぁ確かにグラハムらしいとも、意訳的にはあっているかもしれない、そんな感じの表情だった。


「ハティ曹長、いるか」


部屋に入ってきたと同時に上官の声が耳に入り、ほぼ反射的に振り向いてはい、と返事をする。


「日程を変更する。少々調節したい事がある」


飛ぶぞ、その言葉を聞いて了解、と返す。


「カタギリさん、ある程度資料はまとめましたので」


「うん、ありがとう」


行ってらっしゃい、行ってきます、お互いにその言葉を交わして踵を返した。


「......グラハム、少しはデートの行き先を考えた方がいいんじゃないか?」


そんな呟きは誰も拾わず、少し広く感じる部屋に取り残された。




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作者名:椎名魏 | 作成日時:2019年12月4日 21時

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