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あぁ今日は本当にろくでもない日だ。


パァー、とクラクションが壊れたように街に鳴り響く。


腕や背中がじんじんと痛み、荒くなった呼吸を整える。


小柄な少年が表情を固めたままじっとこちらを見ていた。


事はものの数十秒の出来事、一瞬の判断が命取りな出来事だった。


 

 
街を右へ左へと曲がり、目的の店へと向かっていた。


コーヒー豆を買うためにメモに書かれた住所を頼りに周囲を見渡していた。


赤信号で足を止め、携帯の地図を確認し視線を前に戻した時には信号は青になりそうだった。


信号が青になれば誰もが足を進めさせる。


ふと、何かを感じ視線を一度左に向けた。


異常なスピードで走り抜ける車、誰もが驚きの表情をし誰かがクラクションを鳴らした。


視界の隅に小柄な少年の姿を捕らえ、同時に止まる気配のない車が此方に突っ込んでくる。


車の出すスピード、車との距離、直感的に避けきれないと判断したと同時に、私の体は無意識に動いていた。


少年もかなり驚いた様子だったが説明する暇もなく、ただごめんよ!、と声を出し、少年を持ち上げできる限り掌を広げて少年の頭を守る様に胸に押し付けた。


ぐっと膝を曲げて車のボンネットに背中を向けてできる限り飛んだ。


ドン、と鈍い衝撃を受けそのまま車の屋根を転がり、交差点の真ん中の硬いアスファルトに肩から叩きつけられ、勢いのまま数回転がった。


ブレーキ音にどこかにぶつかる音、人の悲鳴が耳に入る。


兎に角安全な場所へ、何処もかしこも痛いが声を上げずにしっかりと少年を抱いたまま立ち上がり、歩道へと移動する。


他の通行に気を付けながらも、前を向き早足で移動する。


「(痛い、苦しい、苦しい)」


あまりの息苦しさに息が出来ない、いや強く背中を打って呼吸器官が麻痺して呼吸が止まっていた。


酸素が足りない、正常に判断が出来ない、何処まで歩いた?私は何処にいる?


「ハティ!」


ぼんやりとした頭に聞き覚えのある声が刺さり、若干視界が広くなる。


「聞こえるか?!私だ、グレイだ!」


肩を掴まれ横から支えられる。


どうやら無事に歩道へたどり着いて倒れかけていた所に知り合いが来たようだった。


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作者名:椎名魏 | 作成日時:2019年12月4日 21時

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