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エーカー中尉!!
通信もつながってないのに、自身の部下の声が頭の中で響いた。
見覚えのある砲撃がガンダムの放った砲撃に一寸狂わずに当たり近くで爆発が起きる。
爆風によってグラハムが乗るフラッグと、目の前にいた青と白のガンダムが互いにバランスを崩した。
そしてその爆発の中から一機のフラッグが飛び出してきた。
「ハティ・ウェンガー曹長?!?!」
彼女しかいない、だが何故彼女が、と疑問が浮かぶ中、その機体はスピードを緩めることなくガンダムに突っ込んだ。
ガンダムの手前で、フラッグを飛行状態からモビルスーツ形態に変形、つまるところグラハム・スペシャルをやっけのけ、その勢いのま体勢を整えたガンダムを蹴り飛ばした。
なんと、と歓喜の声を上げようとしたら通信がつながり、画面からハティ曹長の姿を映し出し音声からは撤退を!と声を上げていた。
「撤退する!」
既にハティ曹長はもう一機のガンダムを牽制し、安全に撤退できるように動いていた。
ハティ曹長も機体を反転させて現空域から離脱していく。
2機のガンダムはこちらを追ってくることはなかった。
大型輸送機に戻ると、貨物室に併設されたレストボックス内ではカタギリが座っており、早速端末にガンダムの情報を打ち込んでいた。
「いやはや、本当に予測不能な人だよキミは」
「ブレイドを失った。それに曹長まで来るとはな」
始末書ものだな、と呟く。
「その件については安心していいよ。今回の戦闘で得られたガンダムのデータはフラッグ一機を失ったとしてもおつりがくる。接触時に機体に付着した塗料から、ガンダムの足取りが追えるかもしれないしね」
「それにしても若かったな、ソレスタルビーイングのパイロットは」
「話したのかい?」
「まさか。モビルスーツに動きに感情が乗っていたのさ」
探索班から通信が入り、ガンダム、ロストしました、と短く報告が入る。
「フラれたな」
肩をすくめた、それと同時に扉がプシュと空気の抜ける音とともに開いた。
着艦する前に部屋に立ち寄る様に言っておいたから来たのだろう。
失礼します、と敬礼をしベンチに座る様に促す。
「ハティ君、身体は大丈夫かい?」
「はい、大事ないです」
そういえばまだフライト禁止だったか、と頭の隅で考えながらも先ほどの戦闘を思い返す。
「しかし君も相当な無茶をしたね」
まさかグラハム・スペシャルがやれるなんて、その言葉に曹長は苦笑を浮かべた。
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作者名:椎名魏 | 作成日時:2019年12月4日 21時