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「私はそれからそこに逃げることだけ考えてました。ただ、兄と姉は猛反対でした。」
一体何日喋らなかったことか、あれは最高記録かもしれない、そんな現実逃避じみたことを零す。
「私は兄と大ゲンカし、その際に縁を切りました。名を変えて漸くここに、たどり着けた感じです」
沈黙が走り、何となく気まずい空気になってしまう。
「でも、MSWADに入れて良かったです。良い環境に恵まれ、尊敬する上官の元で空を飛べる事は、身に余るほどの光栄です」
最後まで言い切って、はたっと我に返る。
我ながら気恥ずかしい言葉を並べて何を言っているのか。
だた、隣にいるグラハムの表情が気になってしまい横目で確認する。
「うむ、そうか。私はその言葉が聞けたことを嬉しく思う。私も優秀なフラッグファイターと共に空を飛べることに感謝しよう」
きらきらと、夜にも構わず眩しいほどの笑顔でそう答える。
思わず見とれてしまいそうだが、車を運転している以上視線は前でないと危険すぎる。
視線を戻し、ありがとうございます、と感謝の言葉を並べた。
暫くして、MSWADの輸送機に乗り込み本部へと向かう事になった。
ものの離陸して数分後に軍の緊急通信が入った。
「セイロン島と旧スリランカに5機のガンダム?」
端末に入った情報をおぼろげな視界で読み上げる。
どうも輸送機に乗って上官と技術顧問と別れて別室で座っていた時に、急に眠気が差してきた。
運転疲れが来たのだろうと思い、グラハムには一言入れて少し仮眠をとろうとした時にこの緊急通信だ。
確か、と朦朧な意識の中で微かに働く思考にしがみつく。
「(確か...人革連が、介入して......中尉が、進路を......ガンダム、5機...?)」
端末を握ったまま意識を飛ばした。
『フラッグ、グラハム・エーカー中尉、出撃する!』
突如頭の中に入った声に飛び起き、思考が急に動き出す。
エーカー中尉が出撃?まさか?!
すぐさまパネルを操作してカタギリと繋げ、姿が見えた瞬間に声を上げた。
「カタギリさん、エーカー中尉は?!」
『え、グラハムならガンダムを追って...』
直ぐに別のパネルを操作してオペレーターを呼び出した。
「失礼、フラッグは出撃できますか?」
『はい、いつでも出れるようには』
「すぐに出ます。私はエーカー中尉を追います」
カタギリの方から制止の声が飛んできたが、ソレを無視して通信を切る。
私は貨物室へと駆け出した。
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作者名:椎名魏 | 作成日時:2019年12月4日 21時