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事は一瞬だった。


イナクトはリニアライフの弾を実弾に切り替えトリガーを引いた。


至近距離で弾が射出がされたのにも関わらず、敵機は軽やかに避ける。


そしてイナクトは構わず敵機に突っ込むが、一閃、また一閃と剣を振るう。


両腕と頭部を失ったイナクトはバランスを崩して後ろに倒れた。


ただ一同は唖然としていた。


その中でもいち早く動いたのは、


「失礼」


上官でもあるグラハムだった。


目の前にいた恐らく政府関係者の手からアナログ式の双眼鏡をとり、小さな窓を覗いた。


「な、なにをする?」


「失礼だと言った」


そして動きが止まり、何かを読み取る様にじっとそこを見ていた。


「......ガン、ダム...?」


小さく声を漏らすと、それがあのモビルスーツの名前か?とさらに零す。


カタギリも小さく、その言葉を復唱した。


立ち尽くしていたガンダムは背面部にある円錐状の機関部が唸りを上げ始めた。


光の粒子が大量に排出され、ゆっくりと浮上し始めた。


「推進力もなしで、どうして?」


疑問が沸き上がる中、ガンダムは光の粒子を排出させて一気に空へと飛び立つ。


グラハムは双眼鏡を外し、ガンダムを見送った。


「...最新鋭機イナクト、パイロットの安全性は確かなようですね」


見失った敵を探す様にコクピットから出てきたパイロットは未だに怒号を飛ばしていた。


「しかし、あのモビルスーツ...軍備増強路線を行くAEUへの牽制...いや、警告と取るべきか。だとしても、ここまでされてAEUが黙っているわけがない」


私はガンダムが消えた方向へと目を細め、少しだけ握っている手を強めた。


行こうか、とグラハムの声がかかるまで眩しい空を見ていた。


 


 
ついに始まるぞ、さぁ生き残れるか?


心の中で、意地悪そうに笑う誰かがいる


今は、見ぬふりをした


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作者名:椎名魏 | 作成日時:2019年12月4日 21時

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