しあわせの１２３〜いち〜

手にするもの全部壊したら。 ページ45

「ヒョン！久しぶりですね！」


楽しそうなその声は顔を見なくてもわかるから、深く被った帽子をもっと深く被った。


「ちょっと！もっと久しぶりの感じを喜びましょうよ！ねぇ！」


こいつしっぽがあったら絶対ブンブン振ってるタイプの犬だな。


「それに今日の服ちょっとかっこいいと思いません？！このままデートでも行けそうな」


しょうがなく帽子をとって、スンリを見るとポーズをとっている。


「そのタイは変わってていんじゃない？」


俺がそう言うとスンリは口を大きく開けておぉぉ！って驚いている。


なにをそんなに驚くことがあるのかわからないから説明してくれ。



「これ！店でたまたまぶつかった女の人に選んでもらったんです！やっぱこれいいですよねぇ、かっこいい」


「おまえすごいな、初対面の人のセンスを信じるなんて・・・おそろしい」


「だってその人可愛かったんですもん一目惚れっていうんですか〜？」


思い出してるのかニヤけてるスンリの頬をつねると泣きそうな顔になる。



「ナンパみたいなことしてんじゃねーぞ！」


「いだいでず。じでまぜんよ〜！」


「すぐ一目惚れするんだから」


頬を離すと、痛そうに自分の頬をさすりだすスンリ。


「でも、彼氏がいたんで・・・かっこよさそうな身長も高くてお金持ちそうで」


「はいはい、スンリ可哀想に」


「棒読みやめてくださいよー」


きゃんきゃん言うスンリは正直羨ましいほどに社交性がある、どんな場所でも臆することなくスタートダッシュを決め込む。


人の心のなかにスルリと入っていくのは一番メンバーのなかでうまいだろう。



俺みたいに近寄りがたいオーラなんてなさそうだしなぁ。



スンリのファッションショーは他のメンバーにもお披露目していて、みんなに笑われていた。



撮影が進むなか、ヒョンが鼻歌を歌いながら俺に近づいてくる。



「どうしたのご機嫌だね」


「ドーナツ！もぅすぐくる！」


「・・・・え、まさか」


「ここに届けてくれるように頼んだんだ〜普段配達してないけど特別OKしてもらった」


「いや、どんだけはまってんの」


「一週間は食べてないんだって、こっそり買いに行ってからいけてない」



いや、待てよAがくるなんてわからないし、昨日しょうもない連絡をとりあったときだってなにも言ってはなかった。



大きな挨拶が耳に届く。



これは聞き覚えがあるような・・・ないような。

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