19. 本当の気持ち ページ19
その日の夜、就寝前にグラウンド前のベンチに腰掛ける。
昨日の夜と同じベンチにだ。
昨日の夜と同じ、雲一つない綺麗な星空だった。
別に昨日みたいに寝れなかったとか、不安だとかそういう訳ではない。
ただ…ここにいたら佐久間クンが来る気がした。
「……なにしてんだろ」
我ながら自分の行いが馬鹿らしい。
約束もしてないのに来るわけないじゃないか。
そう都合よく来るわけが無いと思い帰ろうと立ち上がる。
「あ………」
ふと背後から声が聞こえ、振り返ると佐久間クンが立っていた。
手に恐らく買ったばかりの飲み物を持ち、残念そうに眉を下げ笑う。
「また驚かせてやろうと思ったんだがな。
…もう帰るところか？」
まさか本当に来てくれるとは思わず、嬉しくて胸が熱くなる。
それを悟られたくなくて少し俯く。
でもどうしよう。
確かに帰るところだったが、それは佐久間クンが来ると思わなかったからで。
頭の中を色々な思考がぐるぐると巡る。
佐久間クンの前だといつものように簡単に物事を考えられない。
「……ま、待ってたんだよ。佐久間クン、今日も来るかな…って。」
自分の気持ちをそのまま伝える。
だが恥ずかしくて顔を上げられない。
今佐久間クンはどんな表情をしているんだろう。
「……俺も、Aがここにいるんじゃないかと思ってここに来たんだ。」
その言葉を聞いた瞬間、ひときわ胸の奥が締め付けられるように痛む。
嬉しい、好き。そんな単語で全身が埋め尽くされてしまったみたいだ。
ああ、もう私は本当にどうしようもない程佐久間クンの事を好きになってしまった。
顔が熱い、胸がうるさい、脳みそが溶けて好きしか考えられない。
どうにかそれを悟られないように黙って俯く。
「……その、明日練習が休みだろう？
ウミヘビ島にペンギンが居る水族館があるんだ。
よければ一緒に、行かないか？」
突然の誘いに思わず顔を上げる。
佐久間クンは顔を赤くしてじっとこちらを見つめていた。
「……ウン、行きたい。」
小さく頷き、返事をする。
佐久間クンは私の返事に嬉しそうに笑みを浮かべた。
「…ありがとう。じゃあ明日、時間は……
Aの準備が終わったら連絡してくれ。」
「ん、わかった。
…じゃあ、明日…楽しみにしてるぜ。」
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作者名：リリィ | 作成日時：2022年9月11日 11時
