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011(ドラマ9話・前) ページ45

act.11

 春の晩のようなぬるい空気が漂う。両手をポケットに滑り込ませながらゆったりとした足取りで歩く相良は、背中を丸くしてレザー張りのソファーに座る片桐の前で立ち止まって眉に深い皺を寄せた。

「智司、俺はもう我慢ならねぇぜ」
「・・・何がだ」
「そろそろ軟高のあのふたりを捻り潰してもらいてェ」

 相良の台詞に片桐の顔が苦く顰み、威厳と落ち着きを加えた声が空気を震わせる。

「俺に命令しようってのか」
「命令じゃねェ。うちの頭として恥ずかしくねぇ歴史を作ってもらおうと思ってるだけだ」

 毒のある、鋭い相良の声。小さな青筋を張らせ、荒々しいものが突風のように噴き上げる片桐の眼は鋭利に相良を睨みつけ、自分が好きな時に暴れるだけでウダウダと言われる筋合いはないと突き放すような口調で言い捨てた。

「好きな時に、暴れる奴が頭じゃ困るんだよ」

 相良は目尻を吊り上げ、開久は舐められっぱなしだと非難を含んだ語勢で話す。途端、ソファーに腰かけていた片桐はおもむろに立ち上がって相良に詰め寄り、目に角を立てて怒りを眉の辺りに這わせた。

「どこの奴らに舐められてんだ。・・・あァ?俺のせいで開久が舐められてるっつーのか」
「だから、さっき言ったじゃねーか。―――オイ」

 相良と片桐の視線が火花を散らす。片桐から視線を逸らした相良が振り向いた後ろから、壁のように蒼ざめた顔色をした久保が上体をふらつかせながら片桐の前まで進み出た。久保の顔は所々に血が滲み、彼の状態を目の当たりにした片桐の眉が少しだけ上がって上下の瞼がゆっくりと離れる。

「やられたんス、軟高の奴らにいきなり襲われて」
「情けねぇ野郎だな。何したんだてめえ」
「何もしてないんスよ。・・・10人くらいでいきなり襲ってきて、そこに伊藤もいました」
「・・・伊藤?」

 片桐の目が瞬く。刺すような疑惑が胸の底にわだかまり、伊藤は何もしていない相手に対して暴行を働くような不良(ツッパリ)ではないと告げるが、久保の唇から「Aさんも・・・」と、こぼれ落ちた従妹の名前に、片桐の心臓が驚駭(きょうがい)から激しく動悸した。

「A?オイ、Aがどうかしたのか」

 搾り出すような低い声が片桐の喉からせり上がる。久保は冷酷な眼で視線を飛ばす相良を控えめに一瞥し、言葉を選びながら片桐の従妹の名前を舌に乗せた。

「―――Aさんも、俺を庇って軟高の奴らに・・・。女でも容赦しねぇって、言ってました」

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綾波(プロフ) - ナスさん» 初めまして!すごく好きだなんてとっても嬉しい限りです…!相良君とゆっくり恋を育んでいきたいと思っておりますので、これからの展開とドキドキ感のご期待に添えられるように頑張ります! (2020年9月2日 23時) (レス) id: b41655ec04 (このIDを非表示/違反報告)
ナス(プロフ) - きゃ〜!お上品かつ、聡明な小説でその上ドキドキしちゃいます。すごく好きです……!これから発展していく恋愛に期待してます!応援してます。 (2020年9月1日 1時) (レス) id: 28e97fe75f (このIDを非表示/違反報告)
綾波(プロフ) - 如月さん» 初めまして!面白いと思っていただけて大変嬉しいです!これからもまだまだ更新していきますので、今後ともぜひ宜しくお願いします(*´ `*) (2020年8月27日 19時) (レス) id: b41655ec04 (このIDを非表示/違反報告)
如月 - 面白くて一気見しました! (2020年8月27日 17時) (レス) id: 9293909c4a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:綾波 | 作成日時:2020年8月14日 13時

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