008(ドラマ5話・前) ページ30
act.8
岩をも貫くような
「ごめんなさい！まさか怪我するなんて思わなかったの」
「･･･男相手に怪我しねぇ訳ねーだろ」
片桐の唇から、肺ごとこぼれ落ちそうな溜息が吐き出される。Aは片桐の崩れない
工場跡地で開久の不良達と喧嘩したという話は一言も漏らしていないが、開久を統率している番長に隠し通せる程甘い筈もなく。放課後は何があっても絶対に成蘭で待っていろ、と
「分かったか？」
「ええ、分かったわ」
従兄に心配をかけさせないために頷いたAだったが、今日の予定を思い出して小さく声を上げる。
「でも、今日の放課後はお友達と喫茶店に行く約束があってね･･･」
行ってもいいかしら。そう続く筈だった言葉より先に片桐の大きな手がAの髪に触れて、頭を傾げて視界に写った彼の表情に頬が緩んだ。
「大丈夫よ、ちゃんと門限までには帰るわ」
人気の少ない路地に踏み込まないし、近寄りもしない。だから心配しないで、と神妙に伝えようとする従妹に、片桐は渋々といった風に深く息を吐き出して首に手を当てた。
この時、Aの予定の後にでも彼女を自宅に送っておけばよかったと、後々深い
▼ ▲
「Aちゃん、また明日ね！」
「えぇ、また明日！」
成蘭に転入して仲良くなった友人と喫茶店で会話に花を咲かせ、密度の濃い時間を過ごしたAは、友人と別れて馴染んできた家路を辿り始めた。
野良犬のような怒号や物音がない、ひっそりとした無為な時間。眠ったような平穏さを感じながら腕時計に視線を落とした瞬間、目の端で明灰色な制服が横切った。
「･･･開久高校？」
Aの胸の中に拭い切れない暗雲が立ち込む。じわじわと奥底から沸き立つ不安と、風船のように膨らむ好奇心。
―――危ない所には行くな。
今朝、従兄から受けた忠告が警報ランプのようにAの頭の中で鳴り響く。しかし、膨れ上がった好奇心はゆっくりと警報音を覆い隠し、音は静かに飲み込まれていった。
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綾波(プロフ) - ナスさん» 初めまして！すごく好きだなんてとっても嬉しい限りです…！相良君とゆっくり恋を育んでいきたいと思っておりますので、これからの展開とドキドキ感のご期待に添えられるように頑張ります！ (2020年9月2日 23時) (
レス) id: b41655ec04 (このIDを非表示/違反報告)
ナス(プロフ) - きゃ〜！お上品かつ、聡明な小説でその上ドキドキしちゃいます。すごく好きです……！これから発展していく恋愛に期待してます！応援してます。 (2020年9月1日 1時) (レス) id: 28e97fe75f (このIDを非表示/違反報告)
綾波(プロフ) - 如月さん» 初めまして！面白いと思っていただけて大変嬉しいです！これからもまだまだ更新していきますので、今後ともぜひ宜しくお願いします(*´ `*) (2020年8月27日 19時) (レス) id: b41655ec04 (このIDを非表示/違反報告)
如月 - 面白くて一気見しました！ (2020年8月27日 17時) (レス) id: 9293909c4a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：綾波 | 作成日時：2020年8月14日 13時
