007(ドラマ4話) ページ25
act.7
乾いた爽やかな風に長い睫毛がはためく。太陽が天頂を通過した雲の隙間から射し込む光が眩しくて、肩にもたれかけていた日傘を傾けた。
いつも一緒に帰っている従兄は用事でいない。ひとりで過ごすゆるりとした時間は久しく、このまま帰路に着くよりも少し寄り道でもしようか、なんて胸を弾ませながら角を曲がった。―――瞬間、身体に衝撃が走って脚がよろめいた。
「！ うおゥッ、」
声帯が裏返ったような男の声が降り注ぐ。Aの手から日傘が離れ、倒れてしまう衝撃を恐れてキツく瞼を閉じた。しかし、いくら待っても痛みは一向に襲ってこない。不思議に思ってゆっくり瞼を開けると、眩しい程の黄金色がきらりと光った。
「わ、悪ィ！大丈夫か？」
ビビットカラーな髪色の男の子が、Aの身体を抱きしめるような形で支える。彼女の瞳は丸く唖然としていたが、目を見張る彼に「大丈夫です」と答えてスカートに付いた塵を払った。
学ランから覗く燃えるような赤。黄金色に染められた渦巻状の髪。―――
「こちらこそぶつかってごめんなさい。お怪我はありませんか？」
「全然！麗しいお嬢さんに怪我がなくて何よりです」
「そう、それなら良かった」
不良を武装しているような彼は背中に鉄の柱でも入れたみたいにシャキッと背筋を伸ばし、吹かれる風に遊ばれる日傘を拾い上げてAに差し出す。
「ところでお嬢さん、その制服･･･成蘭だよね？」
Aの胸元で黄色いスカーフがひらりと靡く。彼から日傘を受け取ったAは「えぇ、そうよ」と言葉を返し、男の子に「あなたは？」と訪ねた。
「俺ァ、巷で有名な軟高の三橋だ！」
「･･･軟高？」
活発な少年のように晴れやかな顔で名乗る三橋は親指をグッと自身に突き上げる。どこかで聞いたことのある高校名を思い出そうと、Aはきらりと歯を輝かせる三橋の爪先から頭の旋毛をジッと見つめるが、記憶の欠片はシャボン玉のように浮かんではパチンと割れてしまう。
ウンウンと頭を捻るAだったが、三橋の喉を震わせるような声に意識が逸れた。
「ハッ！今井の妨害に遅れちまう！麗しのお嬢さん、またどこかで！」
「えっ、あ、はい」
突風のように駆け出して行った三橋の背中を見つめる。
「･･･軟高って、智司さんと喧嘩したところだわ」
不意に、Aの脳裏に記憶が咲いた。
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綾波(プロフ) - ナスさん» 初めまして！すごく好きだなんてとっても嬉しい限りです…！相良君とゆっくり恋を育んでいきたいと思っておりますので、これからの展開とドキドキ感のご期待に添えられるように頑張ります！ (2020年9月2日 23時) (
レス) id: b41655ec04 (このIDを非表示/違反報告)
ナス(プロフ) - きゃ〜！お上品かつ、聡明な小説でその上ドキドキしちゃいます。すごく好きです……！これから発展していく恋愛に期待してます！応援してます。 (2020年9月1日 1時) (レス) id: 28e97fe75f (このIDを非表示/違反報告)
綾波(プロフ) - 如月さん» 初めまして！面白いと思っていただけて大変嬉しいです！これからもまだまだ更新していきますので、今後ともぜひ宜しくお願いします(*´ `*) (2020年8月27日 19時) (レス) id: b41655ec04 (このIDを非表示/違反報告)
如月 - 面白くて一気見しました！ (2020年8月27日 17時) (レス) id: 9293909c4a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：綾波 | 作成日時：2020年8月14日 13時
