005-2 ページ15
「ねえ智司さん。智司さん達の通う学校って、確か開久高校でしたよね?」
「? 前にも言ったろ。それに、その高校の制服着てんだろうが」
アスファルトの道を車が通り過ぎていく。片桐が纏う灰色の長ランが揺れ、Aの長い髪が同じようにさらりと靡いた。登校中の生徒達は、片桐とAを避けるかのようにふたりから目線を反らして歩いている。
「(ここまでとは・・・想定外・・・)」
開久高校の噂は同じクラスメイト達から聞いてはいたが、何も視線が交わったからといって喧嘩が始まる訳でもないだろう。つい昨日まではそう思っていた。しかし、今は自分の考えを即座に訂正したい。突然喧嘩が始まるのではない、喧嘩を売られたと勘違いして始まってしまうのだ。
片桐と同じ制服を着た学生達は皆して制服を着崩している。こちらに対しても丁寧に睨みを効かせてくれるが、片桐の圧のようなもので彼らは顔を伏せたり反らしたりして、それから必ず片桐に頭を下げて挨拶をするのだ。これで彼も立派なツッパリだという証明になった。
「さすが智司さん、慕われてますわね」
「(コイツ・・・俺が
従兄がツッパリだと判明したからといってAの態度が変わることもなく。流石だと嘆称するAの言葉に、片桐は思わず従妹の思考回路を危惧してしまった。
知名度は知らずとも険悪そうな雰囲気を醸し出している開久の連中達を見かけたとしても、相良の鋭利な威嚇を浴びたとしても、Aの顔は石蝋のように固くなったり顔色が蒼くなったりすることはなかった。だからこそ、余計に
「? どうかされました?」
Aは日傘から顔を覗かせ、澄み切った瞳の中に片桐を写す。
「なんでもねェよ。オラ、遅刻すんぞ」
「えっ、智司さんが遅刻されますの?」
「何でだよ」
肌を突き刺す程に降り注ぐ白いほどに冴え返った太陽光から守るように、片桐はAが持っている日傘のシャフトを掴んで彼女の腰に手を回した。
「智司さん?」
「紫外線に弱いなら俺と間隔空けんな」
彼女の長い睫毛がはたはたと揺れる。照れたようにはにかみ、淡い桃色に頬を染めながら片桐の身体に自身の身体を寄せた。
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※ この物語は相良落ちです
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綾波(プロフ) - ナスさん» 初めまして!すごく好きだなんてとっても嬉しい限りです…!相良君とゆっくり恋を育んでいきたいと思っておりますので、これからの展開とドキドキ感のご期待に添えられるように頑張ります! (2020年9月2日 23時) (レス) id: b41655ec04 (このIDを非表示/違反報告)
ナス(プロフ) - きゃ〜!お上品かつ、聡明な小説でその上ドキドキしちゃいます。すごく好きです……!これから発展していく恋愛に期待してます!応援してます。 (2020年9月1日 1時) (レス) id: 28e97fe75f (このIDを非表示/違反報告)
綾波(プロフ) - 如月さん» 初めまして!面白いと思っていただけて大変嬉しいです!これからもまだまだ更新していきますので、今後ともぜひ宜しくお願いします(*´ `*) (2020年8月27日 19時) (レス) id: b41655ec04 (このIDを非表示/違反報告)
如月 - 面白くて一気見しました! (2020年8月27日 17時) (レス) id: 9293909c4a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綾波 | 作成日時:2020年8月14日 13時