006 ページ7
.
「ご、ごめんなさい！ 違うんです！」
紫耀「へ？」
慌てて頭を下げると、ポカンと口を開けた紫耀さん。
行き付けのマスターのお孫さんという彼に、変な誤解をされてこの場に居づらくなることの方が嫌だった私は、
…意を決して口を開いた。
「あまり男性が得意ではないんです。
……いや、というか苦手です。ものすごく。」
水を被ったようにその場がシンとした。
紫耀さんは混乱しています、と顔に書いてあるくらいえっと…と首をひねっている。
紫耀「……えっと、ぞうさんは…？」
「…マスターはなんというか、まだ…平気でした。」
紫耀「まだ？」
「……若い男性が特に苦手で。」
なるほど…と腑に落ちたのかは分からないけど、とにかくなんとか納得してくれたような紫耀さん。
「なのでこれからは空気のように扱ってください。」 と、言葉を続けようと思った瞬間だった。
紫耀「あっ、じゃあ僕で練習するのはどうですか？」
「え、」
紫耀「克服計画考えときます！」
「いや、そん…！」
紫耀「頑張りましょう！」
…今のわたしには、
フンス！と意気込んでる彼に「必要ないです」なんて無慈悲に声を掛ける勇気もなくて。
まあ、それとなく月日が経てばきっと彼も飽きてくるだろうし。
紫耀「あ、ごめんなさいお客さん来たので戻ります」
「いえ、大丈夫です。 これ、食べたら出ますね。」
紫耀「ごゆっくり！…あ、これ返します。」
渡されたのは社員証。
紫耀さんは、「脅すようなことしてすみませんでした！」としっかり頭をさげてお客さんのところへ爽やかに掛けて行った。
「(…なんだか面倒なことになったなあ。)」
彼の背中を、まだ温かいコーヒーを啜りながら見つめてそんなことを思った。
きっと彼の善意でのことなんだろうけど。
でもまあ、結果彼に事実が伝わって私はここに来づらく無くなったわけだし。
それに咄嗟にこの間みたいな拒絶反応が出ても不思議がられないのは幸いだった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
『男性恐怖症って、お前が？』
『そーいうの、顔のいい女か言うことじゃね？(笑)』
『どの口が言ってんだよ(笑) 鏡見ろよ〜』
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
.
「(…変な王子様。)」
じんわりと胸が温かくなったのはきっと、
飲み下したコーヒーのせい。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 195人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あき。 - 新作公開、おめでとうございます。おかえりなさい！が合ってますか？笑 平野のイメージぴったりでやっぱり雪乃さんの描くお話は大好きです。引き続き雪乃さんのペースで更新がんばってくださいませ。 (2019年4月1日 18時) (
レス) id: 1e1b84a358 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雪乃 | 作成日時：2019年4月1日 3時
