愛、哀【wrwrd】【短編集】 (ページ39)

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●お菓子な家　？ページ39

ヘンゼルとグレーテル見て思いついた

A目線

A『お腹空いたね…』
tn｢…おん…ほんまに…｣

食べ物を食べずにただひたすら歩いている私達。
血は繋がっていないものの、血が繋がっているみたいに仲の良い兄と私。

私が寝ている間に、親はどこかに行っていた。
私とトントンは捨てられたんだ。

私が知らない男の人に誘拐された時に助けに来てくれた兄…トントン。
その時に、男の人の片眼を潰したときのトントンは怖かったけれど、わたしのためにしてくれたことだから。

tn｢…はぁ、腹減った…｣
A『……んね、…ん？なんか、甘い匂いがする…』
tn｢あ、待ちぃ！A！｣

匂いがする方へと走っていく。

と、匂いが強くなったところに、男性が立っている。
その片目隠しの男性が私を見て、名前を呼んだ。

男性｢…A…ちゃん…？｣
A『……？何で知ってるの？』
tn｢Aっ！｣

男性｢…………チッ。｣
tn｢誰やお前！Aに何したん！｣
A『な、何にもされてないよ…？』

男性は小さく舌打ちをして、｢…Aちゃん、お腹減ったやろ？おいで？｣と私に甘い声で囁いた。
ああ、何故か体が言うことを聞かない。
行かなきゃ、行こう。

A『うん、行く…』
tn｢は、なんで！行かなくても…！｣
A『トントンは黙ってて！』
tn｢っ｣

男性｢あーあ、振られてもうて。着いてきてもええんやで？｣
tn｢…｣

私は男性の手を握って、男性に着いていく。

ついに、甘い匂いの正体が分かった。

A『わぁ…！』
男性｢すごいやろ？お菓子の家やで。全部食べてええよ。｣
A『本当に！？トントン、食べよう！』

俯いて黙ってしまうトントン。
さっき、強く言い過ぎちゃったかな。

A『トントン、ごめ…』
tn｢…お前、右目見せてみろ。｣
男性｢………ほーん、やっぱ気付くか。｣

男性がサラリと髪を横にずらすと、大きな傷が右目に付いていた。
他分、右目は見えていないだろう。

tn｢…A、おいで？この男は、ダメや。｣
A『ぇ……？』

ぶあ、と記憶が蘇ってくる。
この甘い声、青いスーツに赤いネクタイ。
あの時、私を誘拐したのはこの男だ。

A『トントンッ！！』
tn｢おん、ええこ。
じゃあもう、帰るから。｣

男性｢…Aちゃん、俺はもう君を助けられんみたいやわ。
自分でどうにかしいな。まあ、もうそろそろ賞味期限やろうけども。｣

男性は私に柔らかく微笑みかけた。