愛、哀【wrwrd】【短編集】 (ページ28)

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花瓶、買わなきゃな　sha ページ28

sha目線

A『しゃおしゃお、なんかあった？』
sha｢…るっさい、放っとけや｣
A『放って置いてって…そんな悲しそうな顔してるのに、出来ないよそんなこと。』

公園のベンチに座っていたら、Aが声を掛けてきた。
……１週間前に母親が病死した。
と言っても、友達に軽口を叩いたり、いつも通りに過ごしている。

前から癌を患ってはいたが、最近転移してしまった癌が特に身体にダメージを与えたらしい。

俺が幼い頃に父親が家から出て行き、兄と母親と過ごしてきたのに。
なのに、俺が初めて母ちゃんの病気が癌だと兄から知らされたのは１ヶ月前だった。

A『…しゃおに何があったのか知らないけど、力になれることがあるなら言ってね。あ。あと…本当に1人にした方が良い…？』
sha｢…ごめん、やっぱおって｣
A『うん、ずっとしゃおの隣にいるよ』

そう言ってAは俺の背中を優しく摩る。
俺に嫌なことがあったときに母ちゃんがよくやってくれるのと重なって、涙が溢れた。

多分、15分くらい泣いてたと思う。

sha｢……ぁー…ありがと…｣
A『んーん、大丈夫。』
sha｢…アイスでも食べてくか。｣

A『うん、奢っ……あっ。』
sha｢ん？……あ、ショッピ。｣
syp｢ども…奇遇っすね。何してんすか？｣

Aが俺の後ろを見て、フリーズしたので何があったのかと後ろを振り返ったら知り合いがいた、という状況だ。

sha｢……んー、あー…ゾムには言うなよ？今落ち込んでたんやけど、Aに慰めてもらったんよ｣
syp｢へぇ…彼女さんですか？｣
sha｢彼女ちゃうわ！｣

でも、そう見えてるなら嬉しいな…なーんて。

syp｢さてと。俺はもう帰りますね、新作のゲーム出るんで。じゃ。｣
A『また明日です！』
sha｢また明日～｣

ショッピに手を振って、Aの方をチラリと見た。

A『……なに？』
sha｢いや？なんも。｣
A『ふーん…あ、私ねーアイスはピノが良いな、奢ってくださーい』
sha｢…………ガリガリ君で我慢し。｣

納得いかない顔をしながら、Aはコクリと頷いた。

sha｢…良かったん？アイスなしで。｣
A『うん、やっぱいらないなーって気分』
sha｢ピノじゃないから嫌だったん？ごめんって…買うから｣
A『そ、そういうわけじゃないよ！』

sha｢じゃあなんで｣
A『ほんとに気分だよ！そんなに深く考えなくても良いのに。優し。』

確かに、Aは気分屋だったなあと今更に思い出した。