愛、哀【wrwrd】【短編集】 (ページ19)

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●遊んでくれるやろ？　sha ページ19

A目線

電車から降り、駅を出たところだった。
小学生低学年から中学年くらいの子が、私の服を掴んだ。
オーバーオールがよく似合う女の…子？いや、もしかしたら男の子かもしれない。

子供｢なー、お姉ちゃん。
おれのこと、遊園地に連れてってや！｣
A『…？お母さんにそう言うことは言おうね、家族の人が心配しちゃうよ。』

『急いでいるから』という言葉は飲み込んだ。
あれ…？別に、急いでいない。

子供｢あっ、俺な俺な！シャオロンゆうねん！
母ちゃんも父ちゃんもおらんねん！
そんでな、そんでな、俺1人やと遊園地入れて貰えへんねん！｣

子供ちゃん改め、シャオロンくん…は、パタパタと子供特有の動きをする。
家族さん…共働きなんだろうな、きっと寂しいんだろうなぁシャオロンくん。

と、シャオロンくんは肩から提げていたバッグから遊園地のチケットを2枚取り出した。

sha｢ただで遊べるんやで！すごいやろ！｣
A『……でも、やっぱり家族さん達が心配するし、知らない人にそんなこと言ったらダメだよ、今の世の中、シャオロンくんみたいな可愛い子は狙われちゃうからね？』

sha｢母ちゃんは俺が寝てる間に弁当だけ置いて外出て、父ちゃんは死んどんねん！弟が1人おったけど、どっか行ってもうてん！｣
A『は…？』

要するに、放置子…という奴だろうか。
というか、弟が消えたのも、お母さんがシャオロンくんと関わろうとしないことも気になる。

sha｢……皆な、俺のこといらん子って言うんよ。
だから俺、何しても心配する人なんておらんから、お姉ちゃんと遊園地行く！｣

無邪気な笑みを浮かべるシャオロンくんは、今までにどれだけの寂しさを背負ってきたのか。

sha｢なぁ…だめ…？｣
A『……今回だけ…ほんの少しだけ…だよ』
sha｢ほんま！？えへへ、やったぁ！お姉ちゃん大好き！｣

ぎゅっとシャオロンくんは抱き付いてくる。

sha｢はい！チケット！お姉ちゃんのおなまえは！｣
A『Aだよ。よろしくね』

そう言うとシャオロンくんは嬉しそうに｢にひひっ、お姉ちゃんのお名前聞いちゃった～！｣と私に笑いかけた。
そう言えば私、どうしてこの駅に来たんだっけなぁ。と言うか、ここってどこ駅だっけ。

sha｢Aお姉ちゃん？｣
A『あ、ごめんね、じゃあ行こう…』

道を調べなきゃ、そう思ったが、目の前にはボロボロの遊園地の入り口。

sha｢おん！いこ！｣
A『あ、まっ…』

私も急いで移動した。