【d!】メランコリック・マジック【魔法パロ】 (ページ10)

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教室を出て本を仕舞うためリュックを開ける。
まじまじと改めて分厚い本を見てみると、【文学史便覧】という大きな文字が目をひいた。

中に入れるだけでかなりの重量になったため、心なしかみんなの足取りがゆっくりになった。

「数学は～…えーっと…」
『3つ左の教室だね』

暖かい風を切るように足を踏み出す。
しかし左を向いた途端、いきなり反対側の奥から誰かの唸るような怒号が飛んできた。

「＿＿＿＿…!!!!………………ぁらへん!!」
「＿＿………まれ、せめて午前だけは行け」
「＿＿＿さい、命令すんな!!」

廊下を行く生徒達がみんな怒号のもとを困惑した顔で見つめている。あまりに遠くてはっきり姿は見えなかったが、生徒と先生であるように見えた。

「ひーっ……怖、なにあれ」
『なんかすっごい怒ってるね…』
「1.Kのおふたり、関わらんほうがええよあれは」
「えっ」

ふと隣に現れた青線のネクタイをつけた男の人はそう告げて、いかにも慣れているような、「またあれだよ」と言うような表情で大きなあくびをした。

「ごめんなあウチのが。あの人昨日まで校舎ぶち壊そうとした罰で一ヶ月寮内隔離くらっててな、ようやっと解放されたばっかやのにこれやで。懲りひんね」

同じ寮の人らしい男性は懐から小さな円盤のようなものを取りだして「あ、2限外やった。時間ないわ」と呟いてそそくさと私の前を歩んでいってしまう。

「あ、お嬢さん可愛いなあ、よかったら今度食事一緒にどう？」
『……遠慮します』
「あらら悲しい。じゃーね、ばいばい」
「…変な先輩やな…混乱してきたわ」

行こ行こ、とチーノ君に連れられ、彼の方へ振り返って歩き出す。教室に入るまで怒号は響き続け、すれ違う先輩らしき人達が何度も廊下の奥を呆れた顔で眺めていた。