入学×午前・快晴 ページ3
「新入生の皆さん、入学おめでとう」
とても広い。オレンジがかった明るい茶色の壁に、バスケットゴールがいくつか見える。集められた私たち新入生を見下ろす形で、校長先生が壇上に立ち挨拶を始めていた。
季節は春。
私の住んでいた街は1年の7割が秋と冬で構成されていていつも寒い。そんな地域に比べれば遥かに暖かい春という季節は私の心すらも暖めてくれた。
2階の窓から桜の花びらが降る。
「…さて、これから君達が過ごすこの学院では、魔法を多く取り扱うことになります。君達が昨日まで暮らしていた世界では、魔法は【世界の禁忌】とされてきました。ここではその束縛に縛られることはありません」
校長先生は体育館の壁へ手を向けた。
【魔法は世のため、人のために消えた】
【然し、我らの子のために蘇った】
「【我らの子】は、君達生徒を表します。魔法は忌まれるべきものではなく、宝なのです」
静かな体育館に先生の凛とした声が響く。演説のようにも聞こえてくる声に、うっすらと、希望のような何かを感じた。
…恐らく同じ気持ちなのだろう、隣には目を輝かせた男の子がいる。
「未来あふれる君達の輝かしい成長を、教師一同楽しみにしています。これにて入学式は終了とさせて頂きます」
校長先生が礼をして壇上を降りると、司会であろうある先生が私たちに「起立」と告げた。
さっと私たち新入生の100人ほどが立ち上がると、背後にある大きな出入り口の扉がギィ、と開く。
「これから、皆さんの暮らす各寮へ移動してもらいます。
と同時に、大きなガサガサバサバサという謎の足音のような羽ばたく音のような、騒がしい音が後ろから鳴り響いてきた。
『えっ』
「ふぁっ！！？！？」
思いきり振り向くと、皆の元へいろんな動物たちが一直線に駆け抜けている。私も隣の男の子も目をチカチカさせて驚愕していると、一羽の緑色の鳥が男の子の肩に止まり、首をつんつんと突いた。
「いでっ！！何すんねん！」
鳥は続いて私の肩へと止まる。
『痛っ…』
「あら、あなたたちね！」
その刹那、凛とした綺麗な声が降り掛かる。
顔を上げると、金髪の三つ編みに緑の線が入ったリボンの、美しい女性が立っていた。
「初めまして。チーノ君とAちゃんね、私は2.Kのオプロイテ。これからよろしくね！」
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作者名：悠木 | 作成日時：2020年11月21日 13時
