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「まったく！貴女という方は！！」
「む、何よ。一応観光客よ？なんで怒っているの？」
「専用ジェットで来ないなら、国賓用のゲートに案内するから連絡しろって言いましたよね！！なのに名誉教授の貴女が普通のゲートから来てどうするんですか！！？」
「別に国賓じゃないわよ？なんで国賓用のゲートから出ないと・・・」
「国賓に相当するほど、貴女が地位と名声を持っているからですよ！！！」
我々國・首都、ヴィルヴァ。
国の象徴であるこの都市は、この国のシンボルを司る城が建てられるには十分相応しい所。むしろこの軍事国家はここから始まったとされる。
その端。起爆装置付きの石橋を越え、帝都に近くなる、高級感を増した馬車の中で、まるでいたずらっ子の娘を叱るように発言をする男と、おねだりが通じず拗ねる子供のような、成人した女。男はエーミールといった。我々國の幹部で、この國の大学でも教鞭をとる、頭脳担当である。そして女は、A・バーバード。同盟国である隣国・ジャルダン王国の、限られた秀才な子供しか入学を許可されない、ジャルダン王立大学の名誉教授である。若くして、様々な絵画や遺跡から数々の歴史の謎を解き、考古学者としても世界に名を馳せる。
「まぁ、そんなにカッカとしないでよ。貴方とはこの前の学会以来だから、久しぶりにゆっくり話したいんだけど。」
「・・・まぁ、無事ならいいんです。……ふむ、そうですね、Aとは語り合いたい事が沢山あるんですよ。夜、一緒に食事でも？あなたの宿泊するホテルの最上階にある、五つ星フレンチでも。」
「！いいじゃない、フレンチ。ジャルダンの方では有名だったから、食べてみたいのよ。それに、観光するにあたって、いろいろおすすめも聞きたいから。」
「おや、今回は何か目的があってきたのでは？」
「・・・んー、あるっちゃあるわよ？・・・貴方のお仲間がこの短時間で築きあげた国の謎を解き明かす、っていう目的が・・・・ね。」
「ははっ、それは面白い。まるで・・・」
.
.
.
.
「まるで、"ヴァレンティア帝国"みたいですね。」
「ーーーやだ、エーミールったら、お冗談が過ぎて？？？」
ふたりで、くすり、と笑う。
馬鹿みたい、そう世間では批判され続けるのでしょうね。幻は幻のままで生きていけばいいだなんて。
皮肉めいた、この何気ない冗談。
その一言がきっかけで、まさかこの世界の運命を、私のバカンスを奪うだなんて誰が予想していたのだろうか？
―――――否、私だから用意されたんでしょうけれど。
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