EN王国のお姫様 (ページ8)

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外が少し肌寒い。
夕日が沈み、赤と青の混じった空が暗くなっていく頃。

2台あるうちの後ろの馬車に近づくと、ソンフニオッパより少し控えめな黒のスーツに身を包んだ幼なじみが立っていた。

『ニキ…！スーツ、すっごくカッコイイよ！』

「あ、A。そろそろ行かないと────」

そう言って私を見たニキは、鋭い目を少し見開いて驚きの表情を浮かべる。

『ニキ？どうかした？』

「かわ……いや、孫にも衣装ってやつ？」

『ディスられた！！！？』

ニキはふいっとそっぽを向くと、早く馬車に乗って、と私を馬車に押し込めた。

「着いてきてよかった…」

『え？なんか言った？？』

「何も言ってない。ほら、行くよ。」

ソンフニオッパとは別の馬車で会場まで向かう。
ちなみに、ヒスンオッパはこういうパーティーとかには参加しない。
表舞台に立つのはあんまり得意じゃないからって、ソンフニオッパに任せている。
ソンフニオッパ曰く、ヒスンヒョンはやればできる人だけど省エネだから、ということらしい。
私には難しくてよく分からないけど。

「緊張してんの？」

『…まあ、一応。』

窓の外をぼーっと眺めていると、向かいに座るニキが少し心配そうにこちらを見ていた。

『でも、ニキの方が緊張するよね。だって、中まで着いてきてくれるなんて、初めてじゃん。』

「Aはそうやって、すぐ人の心配する。ニキが一緒じゃなきゃヤダ〜〜！って泣いて馬車に乗らなかった人は誰だったっけ？」

『そんな昔のこと掘り返さないでよ…！』

私が初めてアッパに言われてソンフニオッパについていった日、私は緊張のあまりニキに泣きついた。
ニキがパーティーには行けないのは分かっていたのに、それでもニキと一緒がいいって言って周りの大人を困らせたことは、若干の黒歴史として記憶の片隅に残っている。

その時ニキは、困ったように笑いながらも、会場までは一緒に行ってあげるから、って言って、馬車の中でずっと手を繋いでいてくれた。
恥ずかしいけど、とても懐かしい思い出だ。

「パーティーに行くAの後ろ姿を見るしかなかったあの日より、ずっと気分がいいよ…」

ニキが何か小さく呟いた時、馬車が大きく揺れて止まった。
会場に着いたようだ。

「今日はずっと一緒なんだから、怖くなんてないでしょ？ほら、お手をどうぞ。お姫様。」

ニキと一緒なら安心で、実際心に余裕ができたはずなのに、なんでだろう。
ニキと手を繋いでも緊張するみたい。