EN王国のお姫様 (ページ45)

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『何…言ってるんですか、どうしちゃったんですか？』

「あの日の僕はもう居ないんだ。忘れていいよ、A。」

何もかも諦めたような目をしているジェイクオッパ。
何がそこまで彼を絶望させたのだろうか。
もっと沢山聞きたいことがあるのに、言葉に詰まる。

「僕はレイラ王国に戻れと言われてる。多分僕達は……いや、なんでもない。」

ジェイクオッパは部屋を出ようと私たちの横を通り過ぎた。
待って、と声を掛けようとしたその時、ニキが一瞬の間に剣を抜き、ジェイクオッパの首元に剣を向けた。

「犯人だと分かった以上、このまま国に帰す訳にはいかないんですけど。」

「うーん…じゃあ、僕を殺す？」

「…必要とあらば。」

挑戦的とも言える視線をニキに向けるオッパ。
ニキも怯むことなく、ポーカーフェイスを続けている。

「そんなに急がなくても、そのうち僕を殺すときが来ると思うよ…」

ジェイクオッパはニキに剣を向けられても微動だにしない。
ニキが自分を殺せないだろうという自信があるのか、はたまた死んでも構わないと思っているのか。
意味深な言葉に、ニキが少し顔をしかめた。

「それに、Aの前で僕は殺せないよね。」

「………。」

ジェイクオッパは、ニキに向けられた剣を躱すと、扉に手をかけた。
このまま二度と会えなくなるの？
真実も、オッパの想いもわからないまま？
今日この時が、私たちが最後に会える時間なんだと、直感的に感じてしまっていた。

『オッパ…私、私はオッパのこと信じてますから！オッパの口から真実が聞けるまで、ずっと待ってます…！だから、絶対、絶対に、もう一度会いに来てください…！！』

私の言葉がオッパに届いたかどうかはわからない。
オッパの背中に向かって、なんとか言葉を紡いで叫んだ。
オッパは扉の前で少し立ち止まったが、そのまま何も言うことなく部屋を後にした。

ぽっかりと心に穴が空いたようだった。
数分の間、私とニキは呆然と立ち尽くした。

犯人はジェイクオッパなのだろう。
でも、その犯行動機は不明のままで釈然としない。
その理由が大事なはずなのに。

空は黒く染まり、満月が窓からこちらを覗いている。
窓から見えるEN王国の街並みは、とても綺麗だった。

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「…A、君を…君たちを守れなくてごめんね。」

静まり返った廊下に、ぽつりと言葉が落ちた。