EN王国のお姫様 (ページ43)

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『ニキ……暑い。』

「うるさい。だまって。」

マウム王国を後にした私たち。
馬車でEN王国に戻る道中である。
ジョンウォンオッパがまたニキに爆弾を落としてしまったので、馬車の中で絶賛巻き付かれ中である。

『2人ってなんでバチバチなの？？初対面でしょ？』

「Aのせいだよ。」

『3人でも仲良くしようよ。友達は多い方が楽しいじゃん！』

「……今めちゃくちゃ噛みつきたい衝動に駆られている。」

『すみませんでした、二度と喋りません。』

深いため息をついて、でもがっちりと足の間に私を挟んで離さないニキ。
いつになったら終わるんだろ、これ…

「Aはさ、俺が急に、めっちゃ仲良くなった女の子連れてきたら仲良くできるの？」

『え…？』

ニキに仲のいい女の子…？

『いるの？』

「いたらどうすんの、って話。3人で仲良くできるの？できないの？」

『えぇ…人によるんじゃないかな…？』

「俺がその子に今みたいに同じことしていいの？」

『それは───』

あれ、いま私なんて思った？
ハグなんて、挨拶みたいなものだし、オッパとだって、やってるし。
ニキが他の子にするなんて、そんなの、普通じゃん。

『やだ……』

え、どうしよう。胸が痛い。
鼻の奥がツンとする。
私今、なんて言ったっけ。やばい、頭が回らない。

「───いやそれは、まじで反則…」

気づいたら目の前にニキの顔があって、驚いて息が止まって、目を塞いだ。

『っい…？！』

目を開けると、目の前はニキの服。
ニキの香りに包まれて安心する…じゃなくて。

『鼻噛んだ……！！？』

「あっぶね……」

『何が？！噛んでるのに？？』

「自分を褒めたい…」

『だから噛んでるってば…！？』

ドキドキ、と心臓が跳ねるように痛い。
でもそれは、ニキも同じみたいで。
どちらが早いかわからないくらい鼓動が強く聞こえてくる。

「あのさ。ジェイクヒョンとの話が終わったら、久しぶりにAと出かけたい。」

『いいけど…どうしたの？』

「Aと出かけたいだけ。」

笑った顔は昔のままなのに、長く伸ばされた前髪が目にかかったニキは本当に大人っぽくて、私は黙りこくることしかできなかった。
馬車の中でご機嫌なニキと、ニキの腕の中で頬が熱くなる私。

EN王国に戻ってきた頃には、ニキはすっかりいつも通りで、私はそんなニキの横でクタクタになっていた。