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『それは…っ』
言い返そうとして、言葉が上手く出てこない。
一言、兄だと言えば済む話なのに、見ず知らずの人に、何も私たちのことを知らない人に言われたその一言が、なんだか現実を突きつけられているようで苦しくなる。
「似てないから…何？俺はAの兄だよ。血が繋がってるとか、同じ親から生まれたとか、そんなのどうだっていい。用が済んだならさっさと帰れよ。」
「はっ…、兄妹ごっこかよ…。こんな面倒臭い女、こっちから願い下げだわ。」
「あ…？」
『オッパ…！落ち着いて！』
最後に吐き捨てるように言って、その男は足早に消えていった。
オッパは殴りそうな勢いで追いかけようとしたけど、なんとかしがみついて止めた。
「…チッ、なんだよあのクソ野郎。A、怪我してないか？」
『大丈夫だよ。ありがとう…ソンフニオッパ。助けてくれたことも勿論だけど…、私の兄だって言ってくれたことも…』
私たちには、血の繋がりという明確な絆がないけれど。
それでも、私たちは兄妹だって言ってくれたオッパ。
汗だくになって私を探してくれるオッパ。
『私、こんなにかっこいいオッパがいて幸せです。』
「あーー、もう…。流石に今日は怒らないとと思ったのに…くそ、なんで俺の妹はこんなに可愛いんだ？」
『ふふ、ソンフニオッパの妹だからじゃない？』
ソンフニオッパは気が抜けたのか、私をぎゅっと抱き寄せた。
久しぶりにオッパに抱きしめられて、嬉しいような、なんだか恥ずかしいような気持ちになる。
「A、俺がなんでこんなに過保護になったのか覚えてる？」
『なんで…って、理由があるの？？』
「Aが5歳のとき、お城から居なくなった事件があったんだけど、憶えてる？」
朧気な記憶の中で、確かそんな話があったような気もするけど、私もまだ小さかったし、細かいことは何一つ覚えていない。
私は静かに首を振った。
「俺はその当時まだAのことを自分の妹だって認めたくなくて、その日“お前なんか妹じゃない“って、Aに言っちゃったんだ。そしたらその後すぐ、Aの姿が見えなくなって…」
ソンフニオッパがさらに強く私を抱きしめた。
「城中を探しても見つからなかった。結局、Aはニキと一緒にニキのアッパの所に行ってただけだったんだけど、自分のせいで居なくなったと思って、生きた心地がしなかった。その時、あぁもうAは自分の大事な妹なんだって気づいたんだよ。」
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作者名：はるひ | 作成日時：2022年11月13日 21時
