EN王国のお姫様 (ページ31)

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右に曲がって探してみたけど、オッパ達の姿はない。
やっぱり最初の所に戻ろうと、Uターンして、さっきと同じように右に曲がる。

『あれ…？さっきのお店じゃない…』

やばい。さらに迷った。
どうしてさっきの場所に戻れないのかも分からなくて泣きそうになる。
ジェイオッパのため息までもが聞こえてくる気がした。

「そこの可愛いお嬢さん、1人でお買い物〜？」

『え…わたし…？』

「そうだよ！君以外に誰がいるの？ねぇ、この後空いてる？少し行った先に美味しいレストランがあるんだけど、一緒にどう？」

『えっ、いや私は…』

「奢るからさ、いいよね？」

急に声をかけられたと思えば、私が話す隙も与えないくらいの勢いでディナーに誘ってくる見知らぬ男の人が。
ええっとたしかこういう時は…

『あの、わたくし、この後はお兄様とお食事の予定がありますので…』

「え、お嬢さんじゃなくて、お嬢様って感じ？へ〜面白い！そのお兄様は今どこにいるわけ？」

『それがちょっと今はぐれてしまって…』

「じゃあ丁度いいじゃん！とりあえず俺とご飯行こうよ。」

なんで強引なのこの人…？！
普通、お兄様と食事するって言ったら、「それは大事なご予定だね。残念だけど、また今度誘うよ。」って返って来るんじゃないの？！

この時私はすっかり忘れていたけど、この方法はジェイオッパに教えてもらった、“舞踏会での誘いの断り方“なのであって、街でのナンパの対処法ではない。

次の言葉を考えていると、痺れを切らしたのか、男の人は私の腕を掴むと、そのまま強引に歩き出した。
腕を振りほどこうとするが、力が強くてビクともしない。
その事実に、段々怖くなってきて、冷や汗が出る。

『ちょっと…！離してください！』

「はぁ？ご飯行くくらいいいでしょ？アンタのお兄様？も許してくれるって。」

「いや、許すわけないだろ。」

『…え、』

私の腕を掴んでいる男の腕を、誰かがガッシリと掴んだ。
聞き覚えのある声に、その顔に、出かけていた涙がすっと引っ込んだ。

「おい、お前。俺の大事な妹に、汚い手で触ってんじゃねえよ。」

「…あー、もしかしてこの子のお兄様…？いや、そんな怒んなくても…別に、ちょっと飯に誘っただけですってば。」

いつもより低い声で、本気で怒ってるオッパ。
男の人も、ビビったのか、私から腕を離して言い訳を続けている。

「ていうか、本当に兄なの？タイミング良すぎだし…てか似てないじゃん、アンタ達。」