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「おっちゃん、このドーナツ2個ちょうだい!」
「お、兄ちゃんかっこいいね〜、1個オマケだよ!」
それがどうしてこうなった。
遡ること1時間前────。
いつものように朝の身支度をしていると、コンコンとドアがノックされた。
ソヌオッパやソンフニオッパはいきなり入ってくるし…ヒスンオッパかな?珍しい。
そう思ってはーい、と返事をする。
「A、おはよう〜!」
『ジェイクさん?!』
なんとやって来たのはジェイク王子。
だけどいつものような格好ではなくて、なんというか、うん、すごく庶民っぽい。
それでも若干溢れ出るオーラはあるけれど、動きやすそうなシンプルな服は所々汚れていて、フードを深くかぶっている。
「今日はこれに着替えて!」
そう言うと後ろをくるりと向いて、僕は後ろ向いておくから終わったら言ってね、というジェイクさん。
仕方がないので、とりあえず貰った服を着てみる。
濃いグリーンの洋服で、頭巾を頭につけるようだ。
『着れました…けど、この服は一体…?』
「街で買ってきたんだ。いつもの服じゃ目立つでしょ?」
『目立つって……、まさか』
「A、僕とデートしよう。」
ジェイクさんはそう言うと、私の手を取って走り出した。
そう、今日はこの前言っていたエンジンマーケットの日。
ジェイクさんは、このままお城を出てマーケットに行くつもりなのだ。
『なっ、無理ですよ…!出口はどこも警備がいるんです!』
「まあ僕に任せて。」
そう言って2階まで降りると、大きな窓をゆっくりと開ける。
『ま、窓から…?!』
「しっ!黙って僕に掴まって。」
言われるがままジェイクさんの服をぎゅっと握りしめると、身体がふわりと宙に浮いた。
2階の窓から屋根をつたって、そのまま塀の外へ下ろされる。
そして私を抱えていた腕はごく自然に私の手へと繋がれてしまうのだ。
これだから王子ってやつは…本当に……
「脱出成功〜!」
『こんなルートがあったなんて…。ところでジェイクさん、この手は一体…?』
「今日は僕たち、王子も姫もお休み!やっぱりさ、自分の国のマーケットに行ったことないなんて寂しすぎるよ。だから今日は、僕たちはマーケットにやってきたただの恋人同士ってことにして、目いっぱい楽しもう?」
城からは出られないって諦めていた私を、こうやって一瞬で外に連れ出してくれたジェイクさんは、人生楽しんだもん勝ちだからと笑った。
「あ、ちゃんとオッパって呼んでね!」
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作者名:はるひ | 作成日時:2022年11月13日 21時