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あの日、私は駅へと続く道で、
ランドセルを投げ出して、地べたに座り込んでいた。



お兄ちゃんがショッピングモールの中にある雑貨屋さんで買ってくれた、赤い花柄のベルトの、腕時計。

それを見ると、時刻は五時半を過ぎていた。




もう帰らなければいけない時間を過ぎているのは、
分かっていても。


私はその場を動くことも出来ず、
ただ時折駅から出てくる人たちを、体育座りをして眺めていた。



地面には枯葉が粉々になっていて、風は肌寒い。










小学五年生のある秋の日。

この日のことは、ずっと忘れられない。




この時のあなたは高校三年生の秋で、
私たちの家から通える距離にある国立大学の進学をめざして、
勉強に追われていた。



あなたが高校に入ってからは、
もちろん前のようにあなたと遊んだり帰ったりは出来ていなくて、
授業が終わる時間があまり変わらない、中学生の流星とほとんど毎日一緒に帰っていた。





けれど、部活に入っていなかったあなたは、
学校がテストなどで早く終わる日には、
必ず私と一緒に帰ってくれていた。


この日も、あなたはテストの最終日で早く帰れるから、
小学校のすぐ側にある公園で待ち合わせな、って、
言ってくれたんだ。







私はその言葉がすごくすごく嬉しくて、
流星を先に帰して、公園で一人、あなたを待っていた。


あなたが来るであろう駅の方向を、
じっと見つめて待つ時間はわくわくして。

あなたにあげるために探した、
公園に落ちている中で一番綺麗ないちょうの葉を、
そっと握り締めていた。







けれど、約束の時間を過ぎても、あなたは来なかった。









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作者名:みなみ | 作成日時:2023年7月3日 12時

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