アナザー・ストーリー〈赤〉 (ページ8)

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白昼夢ページ8

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「流星、来たよ」

目を開けない流星を見ても涙が出なくなったのは、
いつからだっけ。

流星の声や、眼差しの記憶が薄れ始めたのは、
いつからだっけ。

あなたに秘密で、流星の病院に毎週必ず通うようになったのは、
いつからだったか。

病室の窓の向こうには、海が見える。

眠っている流星の顔を見ているこの時間だけは、
あなたのことも、胸の苦しみや靄も、
全部忘れることが出来る。

現実逃避のため。

息継ぎのため。

私が、毎週此処に来ていることをもしあなたが知ったら、
深く傷付くと、分かっていても。

あなたが会議で遅くなる水曜日に、必ず此処へ来ていたんだ。

「流星、ごめんね。
私な、流星との約束守れへんと思う」

流星との約束。

あの日の海。

初めて知った、世界の広さ。

全部が懐かしくなりつつあることが、どうしようもなく哀しい。

「流星、私やっぱり、流星が隣に居てくれへんと、
前の私に戻ってまうねん」

だから、目を覚まして。

あの日みたいに、私を強く、引っ張って欲しい。

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