アナザー・ストーリー〈赤〉 (ページ33)

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あなたがずるずると座り込んでしまって、
太腿に触れる手が、息が、震えているのが、哀しい。

「もう、ってさ…
それはAにとって僕は彼奴の代わりってことやん、」

「そんなこと…」

どうしてあなたは、私の想いを、何も分かってくれないんだろう。

こんなにも分かってもらえないと、
私は懸命に押し込めた本心を、吐き出してしまいそうになる。

「僕は、Aのことだけがずっと前から好きやっ…
でも、Aはそうやない」

あなたの想いを受け止めるだけで十分だと思っていたのに、
私の想いも分かってほしいって欲が、どんどん溢れてきてしまう。

「私もずっと好きやって」

「Aの好きと僕の好きはちゃうんやって…
Aは彼奴と別れたから、その寂しさを埋めるために、
僕と手繋いでくれるんやろ？
あの日、キスしてくれたんやろ？」

とっくの昔に満杯だったバケツは、溢れて、降り注いで、
私達を包んだ。

「決めつけんといてや」

私の気持ちに、気付いて、応えて。

「お兄ちゃんが望の代わりなんやなくて、
お兄ちゃんの代わりが望なんやで」

俯いたままのあなたが、やっと私の目を真っ直ぐ見てくれたから、
心のままに、その唇に触れた。

二度目のキスは、一度目とは違って、そこには温もりがあった。

「私も、お兄ちゃんが好きなんやって」

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