叫び ページ31
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それからあなたは三日間ほど、
私をぎこちなく避けるようになった。
触れることも、想いを伝えることも許されない空気。
あなたは、全てを無かったことにしようとしているんだろうか。
それならそれで、いい。
あなたが正しい、あなたが幸せ、
そう感じる道を歩めるなら、それで。
だから私も、これ以上の関係にはなれなくても、
せめて今まで以下にはなってしまわないように、
懸命に明るく、無邪気な妹として振舞っていた。
もうとっくにいつもの帰宅時刻を過ぎているのに、
家のドアの音がしない。
残業の連絡もない。
溜息をつく。
本当は嫌だ。
あなたと今まで通りに戻るなんて。
矛盾した感情は、何処に吐き出したらいいんだろう。
「おかえり!」
ようやく帰ってきたあなたは、
少し疲れたような、思い詰めたような顔をしていた。
そんなあなたを見て、懸命に明るく声を掛けた。
「ただいま」
あなたの表情に気が付かない振りをして、
ご飯の準備をしようとした時。
あなたが私を、不意に抱き締めた。
「どうしたん?」
心臓が破裂して、このまま死んでしまうんじゃないかって。
そう思った。
腕を回したら、熱い、大きなあなたの背中があって。
あなたは何度も腕に力を込めるから、
私も、言葉に出来ない好きを、ありったけ込めて応えた。
「お兄ちゃん、苦しい」
息遣いが荒くて、やっぱり様子がおかしいあなたに、
ようやく声を掛ける。
「ごめん、」
「なあ、何で…」
「ん?」
あなたの蕩けそうな瞳を見たら、続きは聞けなかった。
なあ、何で、こんなことするん?
何で、決して強引に私を奪おうとはしてくれないのに、
こうして私の心を離してくれないの?
何で、こんなにも私を愛し、求めてくれているのに、
その心を押し殺そうとするの?
私とあなたの恋は、
あなたの中ではそんなに絶望に満ちているんだろうか。
こうやって、我慢出来ないほどに私を求めているなら。
私の心も体も、人生も、全部奪って、あなたのものにしてよ。
後悔も不安も全部捨てて、私を求めてよ。
心が、そう叫んでいた。
これを全部声に出せたら、どんなに楽なんだろう。
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作者名:みなみ | 作成日時:2023年7月3日 12時