アナザー・ストーリー〈赤〉 (ページ4)

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「Aちゃんはさ、好きな人居るん？」

クラスで一番目立つサッカー部のあの子。

勉強が得意で服がいつも大人っぽいあの子。

学年で一番足が早いあの子。

そんな人の名前が上がっていく。

一番目に好きなのはこの人で、二番目は。

そんな風に、無責任で幼い、小学生同士の恋の話。

「お兄ちゃんが好き！」

「えー、家族のことが好きなんて変なの〜」

「まあでもAちゃんのお兄ちゃん、高校生なんやっけ？
大人っぽくてかっこいいよなあ」

あの夏のプールでの日をきっかけに、
私ははっきりとあなたが好き、と自覚していた。

でも、今思えば、
あなたが褒めてくれた洋服ばかりを着るようになっていたり、
あなたが一緒に遊んでくれるのが、
学校の友達と遊ぶ以上に好きだったり。

ずっと前から、あなたのことが好きだったんだと思う。

小学校高学年になる頃には、色々と察して、
友達の前でそれを堂々と口にすることはなくなったけれど、
思いが消えることはなかった。

やけに年が離れていて、容姿にも恵まれていて、
成績も優秀、面倒見もいいあなたは、
幼く、狭い世界で生きていた私の中で、
あまりに大きい存在だった。

そしてそれは、
私を家族として見ていなかったあなたの接し方のせいで、
加速してしまったんだってことに、後になってから気が付いた。

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