アナザー・ストーリー〈赤〉 (ページ27)

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止まった時計ページ27

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「久しぶりに行きたい」

私がそう言った瞬間、
あなたの動揺が、手に取るように伝わってくるようだった。

あなたと私は、昨日の夜、キスしてしまった。

やっぱり後戻り出来ない一歩を、踏み出してしまった。

だから、行かなきゃいけない。

これは、けじめだ。

どうしても私は、あなたと、流星と、
今、向き合わなきゃいけない。

だから、流星の所に行きたいって、言った。

あなたは、私がこの三年間、
毎週流星に会いに行っていることを知らない。

それを隠しているのは、あなたのためで、自分のためで。

流星を心から大切に想っているのに、
それをあなたの前では隠したがる私は、狡い人間だと思う。

あなたを傷付けたくない気持ちも、もちろんあったけれど。

それ以上に私が、傷付いたあなたを、見たくなかった。

あなたは、もう、一年以上流星のところに行っていない。

三日前も、流星の所に行ったばかりなのに。

私はどうしても、流星に会いたかった。

直接謝りたかった。

流星と幸せになる未来を、諦めてしまったことを。

いつも電車で向かう病院までの道のりは、
車だと全然違う場所に向かっているみたいで、
不思議な感覚だった。

でも、車を降りてみると、私を包み込む潮風はいつもの匂いで、
胸が重たいような、弾むような。

病院が見えると、勝手に足が動く。

あなたの足取りは、予想通り重かった。

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