夢と嘘と作り物 ページ25
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「おはよう」
あまりにいつも通りに、声をかけられたから。
昨日の夜のことは、全部夢で、嘘だったんじゃないかって。
すごく、怖くなった。
でも、開いた窓の外から立ち込める雨の香りが、
私に現実だって教えてくれた。
あなたがちゃんと隣に居ることが、
泣きたくなるくらいに嬉しくて。
「…おはよ、」
目が開いても、体が起き上がろうとしなくて。
あなたも、何処か戸惑いの色を浮かべながら、
動こうとはしなかった。
あなたが何かを言いかけて、すぐに口を噤む。
何を言いたいかなんてすぐに分かってしまって、
あなたの弱さゆえの残酷さに息が詰まるけれど、
見えない振りをした。
空中に言葉を探したままのあなたに、私は望の話をした。
気まずそうに、私と同じくらい苦しそうに、
その話を聞いていたあなたを見て、罪悪感はあった。
でも、私は私の中にある本音に目を背けて望の隣に居たけれど、
やっぱり何処まで行っても、望はあなたの代わりだった。
ずっとあなたに触れたかった。
そんなことまで伝えたら、多分あなたは転んでしまうだろうから。
表面だけを掬いとって伝えた。
「ふふっ、あほやろ？私」
抱き締めてほしい、今すぐに。
正真正銘、私の中にはもう、
あなたしか居なくなってしまったんだから。
抱き締められた腕の中は、躊躇いと不安で溢れていて、
流星の顔が思い浮かんできて。
思っていたよりもずっと、居心地が悪かった。
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作者名：みなみ | 作成日時：2023年7月3日 12時
