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「流星、来たよ」
知っていた。
あなたが流星を、妬んでいること。
流星の話をすると、ひっそりと顔を曇らせること。
でも、これが正解のはずだったし、
あの日の私は確かに、あなたとの未来よりも、
流星との未来を選んだ。
流星がこんなことになっていなければ、
私はあなたと道を交えることなんて、きっと一生なかっただろう。
「お花、変えるね」
あなたは知らない。
あなたへの想いを膨らませつつも、
いつかきっと流星がまた、救い出してくれるって、
信じてる私がいることを。
持ってきた青いアネモネを、花瓶に生けた。
流星の病室が変わったのは、丁度一年くらい前だったか。
この病室は前よりも病室の日当たりが良くなって、
流星の顔が心做しか今までよりも穏やかに見える。
望の心変わりに気づき始めた頃のこの日。
私は相も変わらず、あなたには話せない気持ちを吐き出すために、
流星に会いに来た。
何を話しかけたって、目は開かない。
初めの頃はそれに毎度泣いてしまっていたけれど、
最近はもう、受け入れつつある。
「流星、私な。やっぱり、あの人が好きやねん。
やから、バチが当たったんかな」
制服のスカートをきゅっと握る。
「やっぱり、望は流星みたいな存在ではなかった。
初めから分かってたのに、利用した私が、悪いよな」
規則的に動いている流星の鼓動が、
私に希望を捨てさせてくれない。
「私な、流星がこうなって、もう三年も経ってな。
やっぱり、あの人と二人でいると、
日に日に気持ちが大きなってもうてな…？
流星がせっかく幸せにしてくれたのに、
…もう、後戻り出来んくなりそうやねん。ごめんな」
綺麗な寝顔。
今にも目を開いて、あほやな、って笑って。
俺が全部忘れさせたるよって、頭を撫でてくれそう。
「流星。もしあの人に好きって言ってもうてもさ、怒らんでな？
ずっと寝たまんまの流星のせいやから」
「嘘、ごめん。…流星は何も悪ないっ、
もしさ、私がほんまに苦しくてどうしようもなくなったらさ。
流星、その時はいい加減起きて、私のこと抱き締めてくれる？
それまではさ、私、自分の想いのままに、生きてみようかな」
流星は例え私があの人の所へ行ってしまっても、
変わらず私の居場所を作ってくれる。
そんな人だ。
そんな人で、あってほしいんだ。
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作者名：みなみ | 作成日時：2023年7月3日 12時
