アナザー・ストーリー〈赤〉 (ページ20)

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「あんな？…小瀧くんが、昨日駅で違う女の子と歩いてるの見たんやけど」

意外と冷静で居られたのは。

「実はな、小瀧くんがその子といる所見かけたの、
…初めてやないねん」

私がまだ、望のことを、
ちゃんと好きになれていなかったからだろうか。

三年生に上がって、望とはクラスが離れた。

離れても、私たちは変わらない私たちのままで。

喧嘩なんてしたことなかったし。

デートだって、キスだって、した。

それなのに、歯車はとっくの昔に狂って、壊れていた。

私は何一つ気が付かなかった。

その日から、私といない時間の望を気にかけるようになった。

移動教室でわざと遠回りして望のクラスの前を通れば、
知らない女の子がいつも望の前の席に座って、二人で話していた。

何度も、何回も、その二人の姿を見かけた。

悲しくなったりなんてしない。

一度も好きと言わなかったのは、私なんだから。

それでも、望は。

彼氏だからどうこう、とかではなくて、
光を失って、闇の中で、
届かない兄への想いに引きずり込まれていく私を、
何とか現実に留めておいてくれるような存在で。

無くてはならない人だったんだ、確かに。

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