魔法 ページ17
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望と出会ったのは、いつだったっけ。
高二のクラス替えで隣の席になったのが、きっかけな気がする。
初めは、流星より背高い人、久しぶりに見たな、と思った。
整った容姿と明るい性格、サッカー部のエース。
絵に描いたような彼に、私は何処か壁を作って接していた。
けれど、望はその壁を取り壊すのがあまりに上手だった。
「Aってさ、」
「ん？」
「兄ちゃんのこと、好きなの？」
それなりに仲良くなって、
よく話すようになってから二ヶ月くらい。
暑い夏の日の自習時間に、そんなことを突然言われた。
親が離婚して兄と暮らしている、と話したことはあった。
兄の話も、何度かしていた。
けど、核心に触れるようなことは、何も話していない。
「…は？」
「ははっ。キレてる？」
「いや、キレてるとかやなくて…意味わからん…何で？」
「何となく？」
「何となくって」
「兄ちゃんの話、してる時の顔とか、声とか？」
「そんなんで分かるん」
「元々分かりやすいし、Aって」
分かりにくいと言われることの方が、多いのに。
「ちゃうよ」
「何に対しての否定？」
「…全部」
「何で否定するん」
「ほんまのことやから」
「ええやん、嘘つかんくても」
「しつこい」
「Aこそ」
「…私は、」
「ほんまは、俺に隠したいとかやなくて、
好きって自分の中ですら認めたくないんやろ」
鋭すぎる望に、夏なのに背中が冷たくなった。
「別に誰にも言わんし、俺は否定もせんから大丈夫やで」
禁断とか、異常とか。
そんな言葉をかけられるのが、何より怖かった。
だから、その望の言葉に、
私は否定するのも忘れて安堵してしまったんだ。
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作者名：みなみ | 作成日時：2023年7月3日 12時
