アナザー・ストーリー〈赤〉 (ページ12)

今日:5 hit、昨日:3 hit、合計:9,552 hit

・ページ12

·

「そろそろ帰ろか、」

「まだ、いい」

小学生だった私にとって、
この時間帯に家族無しで外にいるのはすごく新鮮で。

私はあなたが来なかったことの悲しさをすっかり忘れて、
少しずつ星の出てきた空を、
砂浜に座って流星とずっと見上げてた。

「大ちゃんに怒られんで？」

「ええねん今日くらい。
約束破ったんやから、私の事心配して焦ったらええねん」

「ははっ、A悪いなあ」

「連れてきたんは流星やで？」

「来て良かったやろ？」

「うん、ありがとう」

流星はいつだって自由で、伸びやかで。

真面目で心配性なあなたとは正反対だった。

この日以来私と流星は、こうして時々、
暗くなるまで海で遊んだり、
目的地を決めないまま電車に乗って遠くの街まで行ったり、
夜中にこっそりコンビニにアイスを買いに行ったり。

所詮、小中学生がすることだから、
今思えば大したことではなかったんだけれど。

あなたと一緒に居たら見れないであろう景色、
出来ないであろう経験を、流星は沢山私にくれた。

流星と過ごすそんな時間は、いつの間にか私にとっては、
あなたと過ごす時間よりも息苦しさを感じずに居られる、
かけがえのないものになっていった。

·