【降谷零】それならいっそ愛しながら壊してよ【名探偵コナン】

Episode09．運命はまだ焦らされる ページ9

彼がキーボードをカタカタと打つ音しか聞こえないこの部屋で、私は後ろでただ立ってパソコンの画面を見ていることしかできなかった。
早く須崎さんが戻ってくる事を心の中で必死に祈っていると、彼は「そういえば」と口を開けた。

「そういえば、風邪はひきませんでしたか」

彼のその言葉に、昨日のクシャミを思い出してすぐに「大丈夫です」と伝える。
画面には沢山の顔写真があり、その中にある彼の顔をすぐにみつけられた。
__コードネーム：バーボン、通称:安室透、本名:降谷零

「昨日ベルモットがジンと話していて、ロゼの組織内での役割が決まりそうですよ」

組織内の役割…須崎さんから聞いた話だと、暗殺や情報収集のような個性に合った役割が与えられ、指示された仕事をするということで、そこで得られる報酬は大きいとか。

「暗殺はまず向いていないでしょうから、差し詰め雑用だと思いますが」
「雑用って…具体的には何をするんですか？」
「取引現場に行って説明をしたり、取引の物を運んだり、組織の重役の接待ですかね」

彼はパソコンの電源を落とし、私の書類を隣に設置してあるシュレッダーに通して終了したことを告げた。
「潜入調査用の携帯番号覚えていますか」と聞かれ、私はすぐに教えると彼は電話番号をスマートフォンに登録する。なんでも、ベルモット達からの指示があれば連絡をしてくれるという。
自分も彼の番号を登録していると、電話が終わった須崎さんが部屋に入ってきた。

「終わったか。Aはもうこのまま帰っていいぞ」
「え…」
「潜入中は余計な出社はせず、指示された時だけ来たらいい。と、いうかその姿をカモフラージュさせるために別の職業になってもらう。優先すべきは組織の動向になるべく接近し、それを報告すること…また連絡するわ」

別の職業？と思ったけれど、何も言わずに警察庁から出ると、13時とお腹の虫が丁度鳴った。
須崎さんは降谷さんと積もる話があると言って私を先に帰らせてくれたが、こんなに早く帰れると思っていなくて家に帰るべきか買い物をして帰るべきか迷いながらバス停まで歩く。
何気なく上を見上げると、朝見た澄んだ青空が、今では白い雲が一つ二つフワフワ浮いていた。

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